7月21日(本会議・代表質問)

私にとって、二度目の代表質問の機会を得ましたが、今回も再々質問の時間不足で思ったように答弁が引き出すことができませんでしたが、ご一読下さい。

7月定例会議事録集

 県民クラブを代表いたしまして知事をはじめ執行部のみなさまにご質問をさせていただきます。
 まず、三位一体改革についてであります。すでに、議論されている部分も多々ありますので、多少の重複はお許し願いたいと思います。まず、今、行われている三位一体改革は、地方分権のためという本来のあり方を忘れた、国の財政的な失政のつけを国民と地方自治体に押しつけてきているものであるということは多くのみなさんの共通する認識であろうかと思います。とりわけ、今年度予算を編成するにあたっての補助金削減分に遠く及ばない税源委譲、さらに地方交付税や臨時財政対策債の大幅削減など、極めて国自らの都合のみを押しつけ、本県をはじめとした各自治体に大変な混乱をもたらしました。
 そこで、私が、危惧するのは全国知事会をはじめとした地方六団体に投げかけられた三兆円補助金削減の候補リストづくりにしても、三兆円削減ありきの国から地方への丸投げ切り捨てであり、真に県民の納得が得られる手法であるのだろうかということです。昨日、知事が述べられたような全国の知事間の納得と合意だけでよいのか。あるいは、説得力のあるリストというのは、本来なら、県民との間で合意してもらわなければならないし、県民に対して説得力を持ってもらわなければならないと思います。確かに、それぞれの補助金項目ひとつひとつを県民の了解を得なければリストづくりが出来ないと言うことではないかもしれませんが、中には大きな意味を持つ補助金もあると言うことです。
 とりわけ、義務教育費国庫負担金はその規模が大きいために、三兆円達成のため候補に挙げざるをえないと言うことで、当初からやり玉に挙がっていましたし、今現在、その存廃を巡って全国知事会議でも合意に達せず、8月18日19日の会議に先送りされている状況です。
 しかし、本議会においても昨年12月定例会において「義務教育費国庫負担制度の根幹堅持に関する意見書」の決議もしてきたところであり、本来、義務教育における国の責任は明確に果たさなければならないと考えるものです。その意味で、知事がよく口にされる「自由度が増す」という一言では片づけられないと思います。国庫負担を廃止し、フラット税率による全額税源委譲した場合には、全県で最大のマイナス45.8%という減額幅をどうみるのかという問題もあります。その不足分は交付税措置されるのではという見方もありますが、もしも、その措置がされなければ教職員は3〜4割ほど削減されることになるのではないでしょうか。
 知事の言う「財源が確実に確保されるならば」という前提が担保されるためにはどうするのか。「国から投げられた三兆円の税源を確実に確保する」と言っても、高知県的に税源は確保しても財源はどれだけ確保できるのか、税制上の保障はないと思うのです。その意味でも、日経新聞社のアンケートには態度保留と答えられている知事にお尋ねします。義務教育に対する国の責任を果たすという大きな枠組みでの国庫負担金による財源確保をしつつも、可能な限り地方の自由度を高めることへの制度改革を進めるべきとの意思表示をすべきだと考えますが、義務教育費の国庫負担金制度に対する考え方を明確に示して頂きたいと思います。
 さらに、その他の廃止補助金候補の列挙について、一般財源化されても事業を継続するのか、それとも事業そのものも廃止するのか、その取捨選択を県民とどのような形で合意するつもりなのかお尋ねします。
 また、三位一体改革の下で足元の財政運営を抜本的に見直さざるをえないとして、提案説明において、「できればあった方が良い」といったレベルのものは、原則として断念するか、凍結をした上で、県が行う仕事は、「県民生活の根幹を支えるもの」「県の発展のために不可欠なもの」に限定するくらいの覚悟が必要だと考えているとのことですが、どのような基準でその区分をしていかれるおつもりなのか。あわせて知事のお考えを聞かせてください。
 次に、提案説明において、三位一体の改革の下での、経費削減については「さまざまな補助制度、施設の廃止も避けられない」との見通しを示した上で、「県民にさらに痛みを求めるからには、職員の人件費の一層の縮減も検討しなければならない」と述べられました。一方で、所属長を前にした財政危機宣言の説明会では「人の力、知恵の力で仕事をする県庁をめざす」とも述べられたようです。厳しい財政状況の下で、なかなか事業費で仕事をすることができなくなっている現在、「人の力、知恵の力で仕事をする県庁」がこれから求められてくることには、一定の理解もできるわけですが、ならば、職員が仕事をすることで、県民がサービスを受けているという実感を得られる県庁組織にしていくことが大切だと思います。そのためには、意識改革、意識改革というばかりでなく、職員の秘めたる意欲と能力を適材適所によって引き出す手だてを講ずることに力を注がなければならないと思うのです。
しかし、その矢先に給与削減を企図する発言はその意欲を後退させることになりかねません。これまでにも、97年の昇任・昇格運用基準の見直しによる生涯賃金の大幅な削減をはじめ、人事院勧告における、5年連続の期末勤勉手当の支給月数の削減と2年連続での給与月額の引き下げ、そして、来年一月から実施しようとする2年連続の退職手当の引き下げなど職員の生活設計に大きな変更をもたらす給与関係の見直しがされました。このことは、少なからず、仕事への意欲をも後退させている面もあると思います。さらに、これまでに行われた職員の削減はピーク時と比較して知事部局では約12%の削減にも達しており、相当の人件費削減は達成されているはずだと考えます。さらに、これから5年間で10%の削減となれば、賃金低下による将来への不安と過密労働のダブルパンチで人の力、知恵の力で仕事をするという意欲が後退することになるのではないかと心配します。
 そこで、総務部長にお尋ねしますが、給与の見直しがドラスティックに始まる前年の96年当時のモデル職員の想定される生涯賃金に対して、先ほど述べた給与の見直しや人事院勧告による期末勤勉手当の支給月数の削減、給与月額の引き下げさらには2年連続の退職手当の引き下げなどを踏まえたときに生涯賃金ベースでどれだけの減収額となっているのか試算を示して頂きたいと思います。その上で、さらに上乗せするかのような給与削減については慎重に対応すべきと考えますが、いかがでしょうか。
 そして、そのような状況の下で、知事の言う「人の力、知恵の力で仕事をする」イメージと、そのような県庁組織へと転換していくために職員の意欲を引き出す手だてとして考えられることは何があるのか知事にお尋ねします。
 昨日も、山本議員、米田議員がお尋ねになりました業務のアウトソーシングについては、重複を避ける形で何点かお尋ねします。昨日から執行部答弁をお聞きしておりまして、私も、極めてその位置づけが曖昧なように思えてなりません。目標とする30〜50%の根拠の曖昧さ、1/3〜1/4のコスト削減は検討委員会メンバーの経験則であるとか目標値が先にありきで走っており、コスト削減のみが優先されてしまうのではないかとの懸念を抱いているところです。
 そういう意味でも、ひたすらアウトソーシングを進めるということだけで良いのかと危惧する思いもあり、慎重な検討をしていただきたいという前提に立ちつつ、以下総務部長にお尋ねします。
 まず、過去にも事業一括であったり業務ベースであったり、多くの民間委託が行われてきましたが、アウトソーシングによるサービス低下や、アウトソーシングすることでコスト高になった例はないのか。これまでのアウトソーシング・民間委託の総括をまず示して頂きたいと思います。
 そして、今後の検討を進める中で、アウトソーシングされようとする業務がアウトソーシングになじむのか。また、委託先が受け皿としてふさわしいのかなどを懸念したとき指定管理者制度のように議会チェックが必要ではないかと考えます。予算審議や決算審査のみでは不十分だと考えるのですが、どのようにお考えかお尋ねします。     
 アウトソーシングの進行具合とセットで定員管理をすることになるとは思いますが、昨日の答弁によれば「取り組みの中で、新たに人員削減が可能になるものも出てくることが見込まれたり、アウトソーシングによって生まれるマンパワーの一部を活用して、本来県が担うべき業務への重点的な対応や新たな行政ニーズに取り組む必要がある」との認識をされているようですので、単純に何%アウトソーシングしたから何%職員を削減するということにはならないと思っています。さらに、生身の人間を業務量と同じように0.2人役0.3人役というふうに積み上げて一人役育ったので一人削減するなどという切り刻み積み上げ方式などによる人員削減は無理があると考えていますが、三年スパンのアウトソーシング、五年スパンの定数削減、さらに、2007年からの大量退職という状況の中で、定員管理をどのようになされるのか考えをお聞きします。
 この項で、知事に最後にお尋ねします。アウトソーシングをする際に、コスト論というのは切り離せない問題として起こってきます。コスト比較の中で常に犠牲を強いられるのはそこに働く方々の人件費です。今後、委託業者や団体で働く労働者の労働条件への充分な配慮をしていただきたいと考えます。そのためにも、契約条項に労働諸法令の遵守を盛り込むとともに、ILO94号条約(公契約における労働条項)に沿って、同様な職種の平均賃金を下回らせないことなどを指導するつもりがあるのか。また、そのチェックが可能なのかお尋ねします。
【橋本知事答弁】
 政府が求めています地方からの補助金の削減案に、義務教育費の国庫負担金を含めるかどうかの議論は、先週行われました全国知事会議でも賛否両論がありましたので、8月18日と19日に改めて会議を開いて最終の案をまとめることになりました。
 これに対する私の立場は、国が財源を保障する限り一般財源化された方が地域の実情に合った、より柔軟で質の高い教育を実現できるはずだという考え方で一貫をしています。ただその一方で、いかにすればこの財源の保障が確保されるのかは国という相手のある問題ですし、特に小規模校や加配の教員の数が多い本県にとりましては、特に慎重な見極めが必要です。
 また、いわゆる標準校の枠組みの堅持など国に対して財源の保障の約束を決して反故にさせないだけの、確かな条件付けが必要だと考えています。とは言いましても、今回の3兆円の税源委譲という国からの投げかけは、税財源の地方分権を進めます千載一遇のチャンスですので、地方として責任ある国庫補助負担金の改革案をまとめあげますことを念頭に次の知事会議に臨みたいと考えています。
 危機的な財政状況をも踏まえますと、基本的な姿勢としては一端全ての事業をゼロベースで検討しました上、県として引き続き実施すべきものは内容を県独自の視点で見直した上で実施をすべきだと考えています。
 また、このことは予算に関連する問題ですので県議会に提案します際には、説明責任を果たす工夫を考えていきたいと思います。
 平成16年度の当初予算では、三位一体の改革に伴う地方交付税等の削減によりまして236億円の財源の不足額が生じています。このため地方交付税等に偏った改革をあるべき姿に戻す努力は続けなければいけませんが、今後も地方交付税等の見通しは予断を許しませんので、現実の問題として同じ程度か、あるいはそれ以上の財源不足が毎年続くことを覚悟しておく必要があります。
 また、今回の236億円という財源不足の額は16年度の当初予算で使われる予定の一般財源2971億円のうち、7.9%に相当します。一方でこれまで部局の判断に委ねてきました予算や、4つの重要課題への取り組みに充ててきました予算等、ある程度裁量可能な経費に充てている一般財源は520億円、一般財源全体の17.5%に過ぎません。すなわち236億円の財源不足を裁量可能な経費だけで解消しようとしますと、その半分近くを削減しなければなりません。しかし現実の問題としてそれは非常に困難なことです。言いかえますと、本来削減が難しいと考えられてきた義務的な経費にも踏み込まざるを得ない危機的な状態ということになります。
 このため先週、所属長を集めた会議の場でも前年度をベースに予算を考えるのではなくて、全ての事業を一端ゼロにしてみた上で必要なものだけを積み上げ直すという発想で取り組んでほしいと指示をしました。また、これまで義務的な経費として扱ってきたものも本当に見直す余地がないのかといった点まで踏み込んで見直しを進めなくてはなりません。ですから、あらかじめ何らかの基準を設けて既存の一つひとつの事業を分類するといったやり方は考えていません。むしろそれぞれの分野ごとに県民生活の根幹を支えるものや、県の発展に不可欠なものは何かといったことを改めて議論することを通じて、新たな予算の姿が見えてくるものと考えています。
【池本総務部長答弁】
 職員給与の見直しに伴います減収額につきましては、行政職の昇級モデルで申しますと退職手当を含めました生涯の給与でおよそ900万円と試算をしております。
 また、人事委員会の給与勧告に沿ったものではございますが、H11年からの5年間における給与改定に伴います行政職の職員の平均年収額はおよそ51万円の減収となっていますし、昨年の官民の格差を反映した退職手当の支給割合の引き下げによりまして退職手当額は平均でおよそ150万円の減になると試算をしております。
 一方県の財政はさらに厳しさを増しておりまして、三位一体の改革に伴う地方交付税の縮減等によりまして、このままでは財政再建団体に転落する可能性があります。この危機的な状況を乗り越えていくためには事務事業の廃止凍結や、職員の給与を含めました人件費の一層の縮減等全ての歳出について様々な方策を検討していかなければならないと考えています。
【坂本県議再質問】
 例えば人勧に伴う削減部分等につきましては、将来に渡っての影響ということの額にはなっていないんではないかというふうに思います。私が言いたかったのは、例えば97年に昇任・昇格運用基準の見直をした際にそれが将来に渡ってどれだけの損失になるかというとモデルで900万円というふうに言われました。人勧においてはこの5年間の見直し、期末勤勉の部分やあるいは給与月額本体の見直しによってそれが将来に渡ってどれだけの減額になるかということで言えば、相当の規模の額になっているというふうに私は思っています。
 そういう意味で、いろんな形の中で今の財政状況の中で踏み込まざるを得ないというふうなことでお答えがありましたけれども、いずれにいたしましてもこの間これまでのこういった見直しをする際に職員団体の間で話もされてきておりますけれども、充分な話し合いがされないままに結局時間が来たので打ち切りというふうな形で進めてこられたケースが多かったように思います。そういう意味では、今後こういった痛みを伴わすようなことをする際には、充分職員団体との間での話し合いもしながら、お互いが理解と納得をして、そして人の力でまさに仕事ができるような県庁組織として進めていくべきだろうというふうに思いますので、その点について職員団体と充分な話し合いをする、そういうつもりを持たれておるのか、総務部長にお伺いしておきたいと思います。
【池本総務部長再答弁】 
 当然、職員給与の見直しを行う場合には当然職員組合とも充分なお話し合いをしていかなければならないという認識でおります。これまでもお話のありました給与適正化等々の中で、お話し合いもしまして職員の皆さんのご協力もいただいて参りました。
 ただ、説明して参りましたように三位一体改革に伴う交付税の縮減等によりまして、さらにもう一段危機的な状況となっております。このままでは財政再建団体に転落する可能性もある中で、それだけは何としても避けなければなりませんので、事業の廃止や凍結等県民の皆様にはさらに痛みを求めざるを得ない、そういった見直しも検討せざるを得ない状況となっております。そうした状況も充分ご説明をしながら話し合いをしていきたいと考えております。
【橋本知事答弁】
 これまでの県庁の仕事は「予算がなければ何もできない」というのが常識でしたが、これからは地域の皆さんのマンパワーや発想と知恵を活かして様々な支え合いの仕組みや、新しい公共サービスをつくり出していく仕事が大切になります。そのためにもいかにして住民力を引き出していくかがカギになりますが、その一つの手法として地域に配置をする職員を大幅に増やすことで、地域の皆様とともに新しい仕組みづくりに取り組んでいます。このように住民力を引き出して仕事をすることや、その前提として県民の皆さんと徹底して向き合って仕事をすることが、人の力と知恵の力で仕事をすることの一つのイメージです。
 また先日、財政危機について職員に話をしましたときには、各分野での規制緩和の取り組みや逆に新たな規制を県内産業の育成につなげる手法等を知恵の力で仕事をする事例として紹介をしました。また、そうした組織にしていくためにこれまでの行政の経営品質の取り組みを通じて、自分たちの仕事の目的は何か、また、県庁にとってのお客様は誰かといったことを改めて認識をしてきました。このため、このことを土台にしながら人事評価のシステムや任用の制度、さらには研修の制度を人材の育成や職員の意欲の向上の視点から見直すことにしています。
【池本総務部長答弁】
 これまでも行政改革大綱の考え方に沿って新しい官民の役割分担を考慮し、民間活力の活用を行ってきました。その際には最小の経費で最大の効果を上げるという行政の責任を念頭に県民サービスの向上や費用対効果も充分に検討し実施して参りました。全ての委託業務や民間移管について詳細な調査ができているわけではありませんが、最近の例で言いますと、この4月から渡船の運行業務の民間委託を行いましたところ、県が当初予想した以上にコスト面でのメリットが出てきております。
 また、県民サービスの点でも養護老人ホームを民間移管した際に入所者の方々からもよい評価をいただいたと聞いておりまして、概ねサービスの面でもコストの面でも期待した効果が出てきているのではないかと考えております。今後ともこうした県民サービスや費用対効果といった点に充分留意してアウトソーシングを進めていきますが、民間の優れた知恵や技術を活用するという点にもこれまで以上に力を入れていきたいと考えています。
 委託を行う場合にはその事業の内容等に関しましては、法令に基づき予算案を審議いただく場等で説明させていただくことになります。ただ、今後本格的なアウトソーシングを進める際には、県の業務の流れを大幅に見直すことになりますのでその内容や改善効果、事業所との役割分担等について充分にお示しをしまして、議論をいただくことが必要だと考えています。
 また、委託する業務を履行する能力を有する事業者を適切に選別していくことが必要だと考えていますので、そのための受け皿の審査要件や発注の際の資格要件といった基本的な方針につきましてもその都度議会にご説明したいと考えています。
 業務のアウトソーシングを行いますことで新たな職員定数の削減も可能になると考えられますが、一方でその委託業務のマネージメントも含め県に残った業務を円滑に進める必要がありますし、本来的に県が担うべき業務への重点的な対応や新たな行政ニーズに取り組む必要もありますので単純に定数を削減するということではなく、それぞれの業務に支障のない配置を基本に考えていく必要があります。今後具体的なアウトソーシングの状況を見極めながら、さらなるスリム化の検討も含め状況に応じた適切な定員管理を行っていきたいと考えています。
【橋本知事答弁】
 現在県が行っています本庁舎の警備や清掃等の委託契約でも委託先に対しましては労働基準法や労働安全衛生法等、法令上の全ての責任を負って取り組むことを条文に盛り込んでいます。ですから今回のアウトソーシングに関連しましても、契約の際にこうした条文を定めるよう検討していきたいと考えています。
 一方、そこに働く方々の賃金はその方の能力や経験、技術等によりまして使用者との間で決定されるのが原則ですので、行政による指導やチェックは困難だと考えています。
【坂本県議再質問】
 これまでも様々な形でアウトソーシングや民間委託をされてきている中で、その部分で大変忌忌しい事態も起こっているように聞いております。例えば極めて長時間の拘束時間の中で働かせていたりとか、あるいは人件費の算定根拠の額からいうと大幅に低い賃金で雇用されていたりとか、そういうことでまさにアウトソーシングや民間委託が劣悪な労働条件の垂れ流し、そういうふうなことになることを私たちは懸念をしておるわけで、そういう意味ではそういったことのないような指導をしていくべきだというふうに考えております。それは民間の労使の関係の問題だと、委託先の労使の関係の問題だということで切って捨てるのではなくて、今言いましたようなことを踏まえて対応できないのかどうかもう一度お伺いしておきたいと思います。
【橋本知事再答弁】
 お話にございましたように、あまりにも長時間、また、あまりにも低い賃金でということが労働基準法や最賃法に触れるということであれば、また別の問題でございますので当然その視点から対処をしなければいけないことだと思います。
 そうした法に触れるようなということを別にいたしまして、一般的に県の様々な職場の労働条件に比べて今議員がご指摘のような劣悪な条件というものがあってはならないと思いますので、指導という言葉の意味合いの取り方はまた別でございますけれども、そういう場合に何らかの形で県として関わっていくということは否定できないことだと思います。 

 次に、こどもをとりまく環境の改善についてお尋ねします。私は、こども条例が提案され審議される過程の中で、今のこどもたちを取り巻いている環境がいかに厳しく、大人の向き合い方にもずいぶんと問題があるのではないかと考えさせられることがありました。そして、継続審査中には、いろんな立場の方や県民のみなさんの意見も聞いてきたつもりです。4月に行った私の県政報告会の場でも、参加者から「子どもが学校に行きたくても、親が行かさないという家庭があることも知って欲しい」という意見も頂いています。また、私が議会終了ごとに県民の方にご意見を頂く「県政アンケートハガキ」には、「こどもは人として尊ばれるべきである。このことに基づく人権感覚を県民一人ひとりが共有しなければならない命題だと考えます。」と書かれているものもありました。
 そこで、現在のこどもを取り巻く環境の中でも児童虐待というもっともこどもの人権が損なわれる事件や相談事例の増加に対してひとつでも二つでも改善できる方策がないかという思いで質問をさせていただきます。
 昨年の12月定例会で浜田英宏議員が乳幼児からの虐待防止ということの御提言もされました。また、浜田議員の質問に答えられて健康福祉部長がモデル的にとりくむ育児支援家庭訪問事業について述べられましたが、この事業も全国的には市町村財政が厳しいために、国の想定の13%しか事業費確保ができていないということも明らかになっています。
 しかし、相変わらず全国では、いたましい児童虐待事件が報道されています。また、全国の児童相談所で昨年度受け付けた児童虐待の相談は過去最多の2万7、128件(前年度比2、874件増)で、対応方針を決めた相談処理件数は2万6、573件(前年度比2、835件増)にのぼっていることが、厚生労働省のまとめで明らかになっており、現実は財政の厳しさを待ってくれないと言う状況になっています。
本県では、2001年の67件という処理件数をピークに若干の減少傾向を見せていますが、その分困難な相談件数が増えていると聞いています。児童虐待問題を巡っては、幅広い相談業務が児童相談所に集中し、相談業務のあり方が課題となっている中で、今年は、教員や保健師を配置するなど体制の強化も図られてきましたが、今後ともの体制強化が求められます。
 また、中央児童相談所の敷地内に「児童支援ホーム」が設置され、一組の夫婦がホームに住み込んで、「ふれあいサポーター」として子どもたちの心のケアをしています。全国で初めての試みでもあり、一時保護の延長として、虐待を受けた子どもや非行、不登校などの問題を抱えている子どもたちと最長3ヶ月の間、生活をともにしながら、心のケアとあわせて親子関係の再統合を支援し、家庭復帰を目指すための取り組みに効果をあげていると聞きます。
 そのような状況のもとで、様々な事情で家庭での養育が困難な状態になった要保護児童が児童養護施設、乳児院、里親などに入所もしくは委託されている中、家庭的な雰囲気の中での児童の自立を保障する制度として養育里親の制度が注目されていると聞きます。全国的には、02年度、要保護児童35、471人のうち里親の元で生活をしている子どもは7.1%、2、517人ですが、本県においては昨年の6月末現在で要保護児童のうち3.8%、14人となっています。
 施設の処遇の充実、向上はもちろんですが、施設と里親の連携などを含め、家庭的な雰囲気の中で要保護児童が癒され、成長していくための「児童の最善の利益」を優先できるような対策を講じていただきたいと願うものです。しかし、まだまだ養子制度と里親制度の混同や制度の周知が図られていないこと、血縁関係を重視するあまりの実親と里親の関係など里親制度による措置が進みにくい面もあるのではないかと思います。一方、こどもたちの多くは再び実親と暮らすことを願っているだろうと思います。そのためにも、実親の抱える課題解決を図る間のサポートが必要なことは申すまでもありません。
 そこで健康福祉部長に、県として、今後一層の里親制度についての啓発や里親登録の促進を図るための対策をどのように講じていこうとされるのか、お聞きします。
 また、虐待されている子どもたちの多くは、自らその事実を語れないで悩んでいる場合が多く、何らかの形でSOSを出そうとしたり、現実に出してはいるが周りが受け止められないでいるという状況があろうかと思います。私たちは、そのような子どもたちが、もっとはっきりと意思表示が出来るように、また、私たちもその意思表示を受け止められるようにすべきだと思います。
 そんな状態を作り出すために、全国でご努力されている方々がいることも知りました。それは、子どもがさまざまな暴力やいじめから自分を守るためのプログラムであるCAPプログラムです。Child Assault Preventionのそれぞれの頭文字をとってCAPと呼ばれています。日本語では「子どもへの暴力防止プログラム」と言われるもので、子どもの自尊感情を高めた上で、「嫌という」「逃げる」「相談する」など暴力への対処法を身に付けさせるとともに、保護者や教師の側にもそのことを受け止めることのできる力を付けさせるための有効なプログラムとして85年に日本に紹介されて以降定着しつつあります。国内には、現在約135のグループが活動しており、県内で活動する高知CAPも新聞紙上でその活躍ぶりが取り上げられましたのでご存じの方も多いかと思います。
 日本PTA全国協議会の調べでは、昨年PTAが行った児童虐待防止活動の中でも、CAPのワークショップを実施し始めている学校も増え、その効果が確認され始めています。本県においても、このプログラムへのニーズが年々高まっているようですし、その効果も期待されているわけですが、現状では、資格を得るための研修の時間的・経費的負担の大きさなどから、学校からのニーズに応えられるだけのスタッフの育成が追いついてないという課題も抱えていると聞きました。今年は、文部科学省から家庭教育支援総合推進事業の委託も受けて、さらにその効果も期待されるところです。
 そこで、教育長にお尋ねしますが、CAPプログラムの効果などをどのように受け止められているのか。
 また、来年度の予算編成に向けて、CAPを教育現場で活用していくための方策の強化と人材育成のための支援が検討できないのものかかいかがでしょうか。
 いずれにしましても、家庭や地域社会や学校、そしてそれらをとりまく日本の社会においてもっと質の高い民主主義の実現をしていくしか、こどもを取り巻く環境の抜本的な解決にはならないと思います。こどもはもちろん人間個々が違いを認め合い尊重し合いながら、家庭や地域や学校や社会を作り出していくこと、そして、そのプロセスに子どもが主体的に参加してゆくこと、その中で子どもの自己決定能力を育んでいくことこそ二十一世紀の子育てと教育にふさわしい原則となるのではないかと思います。
 あくまで子どもを主人公として、保護者と教師と地域が自分たちの学校をみんなで創造的に立ち上げようとする意欲と力、そしてそのプロセスを重視しながら、大人と子どもの関係性を、民主的に体言できる場として学校が息づくことが求められていると思います。
 以上のことなどからも、私は現在継続審査となっているこども条例の制定については、必要だと認識している立場を明らかにした上で、教育長に最後にお尋ねします。
 こども条例が継続審査になって以降、校長会や児童委員の集まり、さらにはPTAの集まりなどでも説明会を開いてこられたとお聞きしました、その場でのみなさん方のこども条例案の受け止めはどのようなもので、また、継続審査となっていることにどのような反応をお示しされているのでしょうか。お聞かせください。
【吉岡健康福祉部長答弁】
 こどもが心身共に健やかに成長しますためには、家庭の中で愛情に包まれて育つことが大切であることは申し上げるまでもありません。虐待などをはじめとしまして、様々な事情によりましてこうした環境がかなえられなくなったこどもを保護者に代わって養育していただくために里親制度が設けられております。現在、県内には43名の方々が里親として登録してくださっており、7名の里親の方にこどもを愛情豊に育てていただいております。
 我が子を育てるのも大変な今日において、保護者に代わって子どもを育てて参りますのは豊かな愛情と熱意がいるとても大変なことであると思います。その崇高なお心とご努力に心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。
 また、里親としてこどもを育ててこられた方々からは苦労した思い出とともに、子育ての喜びを味わうことができたとのお話もお聞きをしております。これまで里親制度の広報につきましては冊子やポスター等で行って参りましたが、こうした里親さんのご苦労や喜びの経験を許される範囲で様々な機会を捉えて語っていただきますことも、里親になっていただける方を増やしていくために有効な方法の1つではないかと思っています。今後はそうした場づくりの検討に加えまして、マスメディアや民生児童委員、さらにはこども支援ネットワークの皆さん等、地域の様々な方々のご協力をいただきますことで、広く県民の皆様に里親制度についてお知らせをして参ります。
【大崎教育長答弁】
 こどもたちへの虐待や暴力は深刻な社会問題です。こどもたちが自らの意志で暴力への対処法を身につけるCAPのプログラムは、県内の学校でもすでに数校で取り組まれており、こうした問題を解決するための有効な手段の1つではないかと強い関心を持っています。
 県教委では現在改訂作業を行っております、人権教育指導資料学校教育編の作成委員に高知CAPの代表者の方に入っていただきご意見をいただいています。また本年度は(坂本)議員のお話にもありましたように、高知CAPに文部科学省の委託事業である家庭教育支援総合推進事業をお願いし、高知市を中心に保護者や児童生徒に対しまして暴力防止の知識や技術の普及にご協力をいただいています。人材の育成が今後の大きな課題でございますが、厳しい財政事情もありますので本年度の委託事業の実績等も参考にしながら、これからの取り組み方を研究させていただきたいと思います。
 高知県こども条例案の作成につきましては、こどもを取り巻く環境を少しでもよいものにしていきたいと願う県民の皆様を中心にワークショップ等を重ねて広く地域の声を集め、県民と県の共同でH12年度から4年間取り組んで参りました。こうしてできあがった条例案でございますが、県民の皆様にまだまだ充分に知られていないというご意見もいただきましたことから、できるだけ多くの皆様にこども条例のことを知っていただくために、4月以降PTAや児童委員の研修会等様々な機会を捉えて説明を行って参りました。
 その中では「こども条例への理解がまだ充分ではない」というご意見や、権利の濫用を懸念するご意見もございましたが、「こどもたちを取り巻く深刻な状況を憂慮して条例を制定し、県民全体でこどもを育てていく気運を高め環境づくりを進めることが必要である、理念を広めるだけでなく条例の中に定められている推進計画を作成することにより、実効性のある取り組みが急がれる」等のご意見が多かったと受けとめています。継続審査となっていることにつきましては、一部に早く決着し課題に取り組むべきとのご意見がございました。こうしたご意見や反応から多くの県民の皆様はこどもたちを取り巻く環境の厳しさを踏まえ、高知県の全てのこどもたちが健やかに育つための取り組みが1日も早く進んでいくことを期待しておられると受けとめています。

 次に、本県の中・長期的な最大の県政課題である南海地震対策についてお尋ねします。昨年も質問させていただいて、その後、県民のみなさんへの啓発のための予算化が図られたことなどにまず感謝申し上げておきたいと思います。
 この課題も昨日、議論がされましたが、一概に全てを評価できるわけではありませんが、防災力評価点が低いとか、自主防災組織の組織化が遅れているとかという状況を見たとき、私は今は地震対策のための基礎体力をつけなければならない時期だと思っています。ただし、基礎体力をつけるにしても、ゼロからのスタートではなく、様々な経験や先進事例に学びながら、トレーニング方法も工夫しながら基礎体力をつけていくことが出来る時期です。しかし、そのためのトレーニング機械を買う自前のお金がない。また、国にお金を出してもらってそれにあてようと思っても、「先行投資のためのお金は出せません。もし、体力不足で被害を被ったら体力回復のためのお金は出しましょう。」というような状況におかれているのだと思います。
 しかし、基礎体力がない限り被害は大きくなるばかりですので、県としての果たすべき役割、国に支援してもらう分野、県下の自治体の役割と連携、県民、民間事業所、団体などそれぞれの責務と連携などを明確にしつつ、お互いの協力で、基礎体力を備えていきたいものだと思います。
そんな中で、民間との連携が試される一つの取り組みが、「東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」に基づき、1メートル以上浸水すると想定される地区の事業所が津波から顧客や、従業員等を守るために東南海・南海地震防災対策計画を策定するというものでした。取り組み期間が短期間のため、県としても、ご苦労されてきたことは理解できますが、現状の策定状況がどのようになっており、未策定の事業所に対する働きかけは今後どのようにしていかれるのか。
 また、この計画は、社会環境の変化、施設整備の強化等に応じ絶えず見直しを行い、実態に即したものとしておかなければならないということですが、どのように中身を伴なったものとさせていくのか危機管理担当理事にお伺いします。
 南海地震対策は、重点施策であるということから毎年の新規事業も多いわけですが、私に寄せられる「県政アンケートハガキ」には、南海地震対策の充実に期待する声が多くある一方で、「そんな先にどうなるかわからんようなことにお金を使うより、今せんといかんことがあるがやないか」という声が少なからずあるのも事実です。そういう意味では、新規事業による効果などはより県民に理解してもらうことが、今後の対策への予算化で必要になってくる事だと思いますので、昨年、手がけた新規事業の進捗状況が順調で、成果の上がっている事業にはどのようなものがあるのか危機管理担当理事にお尋ねします。
 また、昨年の質問の際に、木造住宅の耐震補強などによる経済効果から県内企業への優先的発注をはじめ、産業振興面で防災対策にウェィトを置くことで県内経済への影響を高めていくことを提言させていただきました。今回は、耐震補強工事だけではなく、新聞報道などもされていますが、地震対策のための防災施設、機器、装備、防災グッズなど、県として災害多発地域であることを逆手にとった防災産業の育成を図っていくということも重要かと思います。県外防災関連企業と県内企業の連携で生産をするとか、すでに県内企業でも、防災分野で前進しようとしている企業もあるとのことですが、本県における防災産業の育成についての検討がされているのか商工労働部長にお尋ねします。
 昨年九月定例会での私の南海地震対策推進条例の提言に対して、知事は「いきなりというわけにはまいりませんので、一定やはり住民の皆さん方の思いと活動のレベルが高まってきたところで、そういう活動だとか認識のレベルが落ちないように条例というものをつくって、さらに次のステップに進むと、そのような位置づけで条例化というものを前向きに考えていきたい」との考え方を示して頂きました。
 しかし、その後、私自身が地震対策のための防災基本条例を制定している自治体のお話などを聞くにつけ、機が熟するのを待つというわけにはいかないのではないかと思うようになりました。その方は、「県が条例を作ることによって、県下の自治体の長の姿勢も変わってくるし、事業所や県民の意識も変わってきます。取り組みの積み重ねや県民の意識が高揚した段階で条例化というのは逆だと思いますよ。高知はさまざまな防災対策の大きな試みができる県であって、全国の地震対策のリーダー県になれる可能性を持っているんです。」と励まされました。そして「いずれにしても、防災対策・地震対策は首長のやる気がポイントだ」とも付け加えられました。消防研究所の宮崎理事長が指摘する「被災したつもりで地震の前に投資し、安全なまちをつくるという「事前復興」の重要さ」という考え方も南海地震対策推進条例化に盛り込んでいく必要があると思います。
 さらに、今年に入ってから、本県は「条例等の立法指針」を策定し、条例化の推進を図り、条例を政策実現の有効な手段として、より積極的に活用しようとしています。私は、その指針に照らしたとき「南海地震対策推進条例」こそ「県の行う政策が、県民の生活に直接影響を及ぼすような重要な事項であり、かつ、継続性を有する場合で、条例の意義に照らし条例化の実効性が期待される場合」にあたると思っています。また、条例の意義としては「県としての意思を県民に明確に示す」「県政への県民の関心を喚起し、幅広い参加を促す」意義を持つものであると言えます。そして、条例化のメリットが期待される政策の類型のうち「自治体の重点政策に関するもののうち、実施のルールを明確にする必要があるもの」として位置づけられるものと理解されることからも、条例化は必然ではないかと考えます。
 南海地震対策の条例化は、一定のレベルの高まりを待つのではなく、今こそ、条例を柱に基礎体力を備え、様々な対策を打ち出すべき時期だと思います。そして、その策定過程には市町村代表、事業所代表、自主防災組織代表、高齢者・障害者などを含む県民代表などが参加していくことによって、条例が出来たときには条例そのものが県民のものになっているというぐらいの気持ちで手がけるとすれば今からでも遅すぎるぐらいだと思います。そこで、改めて現時点での条例化に取り組む姿勢について知事の決意をお伺いします。
【宮崎危機管理担当理事答弁】
 東南海・南海地震に関する特別措置法で義務づけられました対策計画は、津波により1メートル以上の浸水のおそれがある事業所や学校等において、津波から避難するための計画です。この計画は6月16日までに県内2049の対象事業所や学校ごとに策定し、消防本部や国・県といった受付機関に提出することになっています。6月16日現在では1296事業所63.3%、7月8日現在では1486事業所72.5%の事業所において策定されています。まだ策定されていない事業所の皆さんに対しては引き続きそれぞれの受付機関から個別に訪問し、計画の意義や策定方法を説明すること等により策定していただきたいと考えています。
 また、すでに計画を策定した事業所の皆さんには、まずは避難訓練を行っていただきたいと考えています。避難訓練を行うことにより様々な課題や問題点が把握できると思いますので、そのことを計画に反映することで中身を充実させていただきたいと考えています。
 H15年度の南海地震対策は、今後の取り組みの土台固めとして地震に関する基礎的な調査や自助共助を支える自主防災組織の育成、個人住宅や県有の建築物の耐震診断等に取り組みました。
 いくつかの主な事業の成果についてご説明します。基礎的な調査としては地震度や津波による物的・人的な被害の想定と、詳細な水深予測・浸水予測に取り組みました。浸水予測につきましてはH15・16年度の2ヶ年で実施するものです。こうした調査により今年度には県内での被害や沿岸域での津波の軌道等、次の南海地震による揺れや津波による影響の全体像が明らかになります。
 自主防災組織の育成としてはこの1年間で128組織が増加しましたが、その内総合補助金を活用して新たに87の自主防災組織が結成され、8つの市と町、24の地区で避難所や避難路の整備。また、12の市と町で484の非難標識の整備が進む等避難態勢の充実が図られました。
 さらに個人住宅の耐震診断につきましては、高知市・南国市・香北町で事業を実施したところ予定していた対象戸数200戸を上回る要望があり、急遽320戸に対象を増やしました。そのことの上に立って今年度は対象戸数を1800戸に設定し、実施を予定している市町村も34市町村と見込まれています。
【起塚商工労働部長答弁】
 南海地震は今後30年間に40%の確立で発生すると言われておりますが、県としての大切な役割はこうした災害から県民の生命や財産を守ることだと考えております。と同時に県内産業が防災の分野でビジネスチャンスを拡げていくことが本県の産業振興や、災害に対する県民意識の啓発に貢献できるものと考えております。すでに本県におきましても地震発生による停電時の避難誘導に役立つ、光る建材を製造している企業や、また地震による津波等にも対応できる街路灯を製造している企業等がございます。
 また最近では県内の企業の数社が、県外企業と連携し防災関連の製品を製造していこうという取り組みも始まっております。こうした活動等を通じまして、本県の産業の振興が図られますよう、産業振興センター等の関係機関と連携しながら取り組んで参ります。 
【橋本知事答弁】
 南海地震が起きますと全ての県民に被害が及ぶおそれがあります。このため南海地震に立ち向かいますには、行政はもとより県民や企業等各種の団体の皆様にもそれぞれの立場で取り組んでいただく必要があります。また、そうした取り組みの基本となります条例の必要性や、県民や企業の参加の下でその条例をつくり上げていくことの意義はよく理解できます。
 ただ、それを実効性のある条例にするためには、まずは自主防災組織の活動や企業の防災活動等を通じて、地震対策に関する課題や問題点を認識していただくことが大事だと考えています。と言いましても、例えば本県は自主防災組織の組織率も、まだ全国平均を下回るという現状ですので住民の皆さんに条例づくりに参加をしていただくとしても、体験に基づいた議論が進まないおそれがあると思うからです。ですから今しばらく準備期間をおいた後に条例の制定に向けての取り組みをしていきますことが、よりよい条例づくりにつながる道だと考えています。
【坂本県議再質問】
 民間事業所等における対策計画の策定等にも見られるように、まだまだお互いが県民も含めてこの地震対策の問題が我がことのようになっていない、そういう意味では地震対策の推進条例を打ち出すことで、そこの意識喚起をしていくというのは私はどうしても必要ではないかと思います。先ほど知事が例として言われましたが、例えば自主防災組織の組織率が低いとかそういうふうな状況になったときには、そういうところでの経験が盛り込めないと。そこがもう少し自主防災組織等も広く組織されてそこでの経験者が豊かな経験を積んできたときに、そういった方が条例策定に参加していくとそういう経験も活かされるんではないか。それは私は逆ではないかと。ここのところがどうしても去年の議論以降続いている部分なんですけれども、ぜひ私は地震対策等に先進的に取り組んでおられる自治体のお話を聞くにつけ、やはり高知県としては地震対策の推進条例というのは全面的に打ち出していくべきではないかというふうに考えておりますのでその点について再度、知事にお考えをお聞きしたいというふうに思います。
【橋本知事再答弁】
 先ほどご質問の中でご紹介をいただきました先進地の事例、またそこでの有識者の声ということは充分参考にさせていただきたいと思います。
 一方、私がお答えをしたことは本県で、現場で取り組んでいる職員の実感を基にしたものでございます。決して条例化を否定しているわけではございませんし、現場の職員も条例化をめざしていきたいと明言をしております。私もそうあるべきだと思っています。ただ、今の時点は少し早すぎるのではないかという現場の職員の実感というものを大切にしたいと思って先ほどのようなご答弁をいたしました。
 今後、鶏が先か卵が先かということよりも、もうちょっと具体的にどの程度の熟度が進んでいるかということも考えながら、まあできるだけ早く坂本議員がおっしゃるような条例化に向けての取り組みが進むように庁内での検討を進めていきたいと思います。

 次に、中央病院の跡地利用をはじめとした県有財産の有効活用についてお尋ねしたいと思います。
 県有財産には行政財産と普通財産がありますが、遊休財産の多くは普通財産の場合が多いということを念頭に置きながら質問をさせていただきたいと思います。
 普通財産には、経済性の追求を目的とするものだけではなく、様々な目的・性質を有するものから構成されていますので、その管理や処分は必ずしも一様には行かない面があろうかと思います。場所的なもの、現況地目、広さ的なもの、形状、価格的なもの、そして何よりも長引く不況などさまざまな要因によって、利用されていない県有財産の処分が計画的に進んでいないというのが現状だと思います。
 これまで、行財政改革のもとで、出先機関の統廃合を進めてくる中、それに伴い、職員宿舎の老朽化、入居者減による廃止など県下に散在している遊休資産の現状を見たとき、県民には「何にも使っていない庁舎」「一体この更地はどうなっているか」という風に映っている遊休財産が多くなっています。特に、財政危機宣言までしなければならない状況となれば、なおさら遊休財産に対する県民の目は厳しくならざるをえないでしょう。2000年度の14件3億3800万円余をピークに、処分実績は思うように進んでいません。向こう三年間の処分計画も策定はされていますが、思うように進むのかどうか不安な面もあろうかと思います。
 そこで、知事にお尋ねします。現状の遊休資産の処分計画が順調に進んではいないという状況の中で、知事のいう今後積極的に進められるであろう「施設の廃止」との関係でいけば、今後さらに他の施設への転用とか処分をしなければならなくなるわけで、その際には、廃止の先にある地域・県民ニーズに応える有効な利活用、また、有効な処分計画も持ちつつ廃止検討をすべきと考えますが、そのようなことをあわせ考えた上で「廃止」の判断をなさるのでしょうか。お伺いします。
 次に、来年三月をもって、廃止となる県立中央病院の跡地利用は、県民が最も注目している県有財産の行方ということになります。駐車場敷地なども含めれば11,317平方メートルという極めて広大な面積を市内中心部に有しており、都市計画道路も近々整備されることになっています。そして、その行く末については高知市及び市議会、市民などからの要望もあり、県としてどのような処分をするのか関心が持たれています。二月定例会でも、東川議員が質問をされておりますので重複はさけた形で質問と要望をしておきたいと思います。
 県としては、跡地を売却の上、病院の性格上自力での一時借入金の解消が困難な芸陽院のために、売却収入をそれに充てるというお考えであることは承知していますし、やむを得ざる措置ではないかとも思います。
 しかし、この中央病院跡地は、その利用のされ方一つで、まちづくりなどにおいて大きな意味合いを持つもので、売却してしまえばどのように利用されるのかについては、県としても知らぬ存ぜぬということにはならないのではないでしょうか。実は、私にも描いた夢はありましたが、今の県と高知市の財政状況を考えれば、そんなことは、口にしない方がよいとのご助言も頂きました。しかし、今でも、その跡地を中心に「環境・福祉・こども・防災」というコンセプトの癒しと安全のゾーンができないものだろうかとも思ったりしています。多分、県としては、高知市や市民の思い、その一方で市として施設整備計画を持ち得ないという現状を受け止めた上で、それでも売却しかないということだとは思います。
 しかし、この跡地利用はとでん西武やシキボウの跡地利用と並んで、行政的にも知恵を出さなければならない。あるいは後々に後悔をしないような利活用または処分がなされるべきではないかと考えます。ここは、病院局任せではなく、一時借入金返済のことは念頭に置きつつも、県として責任を持って県民のための有効な利活用または有効処分を図る姿勢を持たなければならないと考えますが、どうでしょうか。
 そして、場合によっては、そのことを検討する場の設置も必要ではないかと思いますが、知事のお考えをお伺いします。
【橋本知事答弁】
 危機的な財政状況の中では、県が行う仕事は県民生活の根幹を支えるものや、県の発展のために不可欠なものに限定するくらいの覚悟をもって業務を見直す必要があります。その中で県が運営しています様々な施設もニーズの変化や時代の要請を的確に把握しながら、県が持ち続けていくことが本当に望ましいのかどうかの検討を加えていかなければなりません。
 そうした検討の結果、廃止が決まった施設のその後の利用についても県民の皆様のニーズや、県の財政運営を考慮して総合的に判断していく必要がありますが、まず第一には施設の必要性の検討が最も重要だと考えています。
 中央病院の土地を保有しています病院事業は多額の借入金を、つまりは広く県民の皆様に対する負債を背負っていますので、この2月議会で病院局長が答弁をしましたとおり、跡地は借入金の処理のために売却をすることにしています。
 次に、中国残留日本人孤児をはじめとした中国帰国者への支援策について質問させていただきます。
 この課題については、二月定例会予算委員会で我が会派の浜田嘉彦県議がとりあげ、中国帰国者に対する支援について知事から、「財政的な支援、例えば一時金を差し上げるというような趣旨であれば、様々な事情で厳しく、難しいのではないか」しかし、「何らかの支援を県としても手をさしのべるべきではないかという趣旨は浜田議員と同じ思い」として「関係の皆様方に、まずはどういうニーズがあるのかということをきめ細かくお伺いした上で、今の県の財政状況等の中で何ができるのかということを十分検討させて頂きたい」と答弁されました。
 知事も県内在住の中国残留日本人孤児のみなさん45名によって、国を相手に損害賠償請求の訴訟が行われていることはご承知だと思います。本県においては、訴訟を支援する会にも超党派の国会・県会議員が参加するに至っています。
 日本政府は中国残留日本人孤児らに対して「国策により、中国東北地区(旧満州)に移民させた日本国民を、終戦時、中国に遺棄したこと」そして「中国残留日本人孤児を、そのまま長年にわたり祖国への帰還の措置をとらなかったこと」さらに「辛苦の末、帰国を果たした中国残留邦人に対し、充分な定着自立、生活保障等の施策を講じないでいる」という三回の棄民政策を採ってきたと言われています。
 1936年8月、日本国内で大量移民実施のため、各県指導の下に各町村でその分村として、旧満州、内蒙古に集団移民の送出計画を遂行することとなり、ソ連参戦通告の1945年8月8日まで、開拓団を続々送り込み、結果として、1945年5月時点において、旧満州・内蒙古における開拓団は16万7,091人、青少年義勇軍は5万8,494人にのぼりました。その際、「高知県満州開拓史」によると、本県は全国でも10番目に多い10,082人の開拓民送出計画を策定し、県を挙げて開拓民の送出に奔走したことが記されています。
 1945年関東軍は、本土防衛のためということで、この地域の防衛、及び邦人の保護を放棄し、旧満州・内蒙古の開拓団には、老幼婦女子のみしか残らず、突然のソ連軍の侵攻にさらされ、多大の犠牲者が続出するなか、避難を開始しました。後の残留婦人・残留孤児はこの混乱の中、生き残るために、現地中国人に貰われたり、中国人と結婚したり、転々とした末、中国人家庭に入ることを選択せざるをえなかったのです。
 終戦後の引揚げ政策は混乱を極め、中国との国交断絶などによって引揚げ中断を余儀なくされるなど民間ボランティアに委ねられた引揚げに頼り、日中国交正常化以降も、帰国策は遅々としたものでした。
 そして、困難な帰国手続きを経て帰国した後も、祖国に待ち受けていた苦労は、住宅問題から始まって、母国語である日本語の習得、生活習慣へのとまどい、そして就労という過程を辿る自立への道は本人にしか分からない筆舌に尽くしがたい艱難辛苦の道のりだったに違いありません。まさに、このことは戦争において国家は国民を守らないという本質を表したものだと思います。
 その、帰国者たちに本県としても、国の支援策を基本とした上で、可能な支援策を講じてきたことは一定理解をしています。しかし、高齢となった帰国者たちに対して、祖国日本、故郷高知に帰ってきて良かったといえる生活保障、特に老後保障を行っていくということは、県を挙げて送出計画を遂行してきた本県の抱える戦後補償問題でもあると思うのです。国民年金については、1994年の「中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永住帰国後の自立の支援に関する法律」13条により、国庫負担分3分の1相当が支給されるようになりましたが、最高額で年間26万円です。そして、厚生年金は、孤児の大半が1980年代半ば以降に帰国していることから、苦労をしながら、一生懸命に働いてきた結果が、せいぜい月額3〜5万円となっています。これが苦労の末に、帰国して行き着いた最後なのかと思うと腹立たしいに違いありません。
国家賠償請求訴訟は長期に及ぶことになると思います。しかし、帰国者にとっては時間との争いの生活が続くのです。財政状況が厳しいことは百も承知ですし、知事のお考えも浜田議員への答弁としてお聞きしています。それでも、私は毎回の口頭弁論を傍聴する度に、本県として出来ることは何なのかということを思わざるをえず、執行部にも真剣に考えていただきたいという思いでお尋ねします。
 まず、二月定例会で知事が答弁した関係者の意見・ニーズを聞くということは、新年度になってあまり期間も経っておらず、特別の進捗状況は見られないかも分かりませんが、現状はどうなっているのでしょうか。また、今後どのように進めていく予定でしょうか健康福祉部長にお尋ねします。
 次に、長野県では、今年度から県単独事業として「中国帰国者愛心使者事業」ということで、帰国者本人に対して、特別な慰藉を行うための給付金として一人月額3万円の給付金を給付し始めました。このような、経済的援助も中国帰国者への支援策のひとつの選択肢として検討願えないものか知事にお尋ねします。
【吉岡健康福祉部長答弁】
 中国からの帰国者の方々のご意見やニーズにつきましては、来庁されました帰国者の方々から直接お話をお伺いしますとともに、県が設置をしています就労生活相談室の相談員や中国帰国者の会の方にお話をお聞きをして参りました。その中では就労や日本語の習得、住宅の確保等に加えまして最近では特に医療や介護といった高齢化に伴います生活不安の声が多く寄せられています。このため今後は従来の相談に加えまして、帰国者の方々の会合等に直接出向く等しまして、さらによりきめ細かにお話を聞かせていただき先ほど知事からお答え申し上げました、中国語版の医療や福祉のパンフレットづくり等、今後の具体の取り組みに活かしていきたいと考えております。
【橋本知事答弁】
 長野県は全国でも最も多くの満州への開拓団を送り出した県として、中国から帰国をされた方々への特別ないたわりの気持ちを表すために、今年度からご指摘のような給金の支給を始めたとお聞きをしています。
 また、中国からの帰国者の方々が言葉や文化の問題、あるいは経済的な問題等今なお厳しい状況にあることは承知をしていますが、戦争の被害者である帰国者への経済的な支援は基本的には国の責任で行われるべきものだと考えています。
 こうした中、お尋ねの給付金は長野県だけが実施しているものですし、本県の危機的な財政状況も合わせて考えますと、本県での実施は難しいと考えています。
 一方県では、これまでも日本語の習得や就労についての相談や支援を行ってきましたが、その中で医療や介護でのサービスを受けるときに制度がよくわからないとか、言葉が通じなくて不安があるといった声を数多くお聞きするようになってきています。こうしたニーズに対応しますため国では帰国者の方々にホームヘルパーの資格を取るための通信教育や、受講の費用を助成する取り組みを実施しています。しかし本県ではこの制度を利用されている方がまだいらっしゃいませんので再度、制度についてのお知らせもして帰国二世や三世の方々がヘルパーの資格を取れるように支援をしていきます。
 あわせて、中国語に対応できる医療機関や介護サービスの機関についての情報を収集して提供しますとともに、医療や福祉の制度についてわかりやすく説明をした中国語版のパンフレットを作成します等、本県の実情に即した支援をしていきたいと考えています。
【坂本県議再質問】
 確かに財政的に厳しい状況の中ですから、極めて明確なお答えで「検討できない」ということだったわけです。それは1つには国の責任という部分もあるかと思います。ただ私が言いましたように、一方で国の命を受けて県がその送出計画を策定し県としてそれに奔走してきたというふうな状況があります。実は私の母も旧満州で生まれて育って引き上げてくる際に一歩間違えば同じような立場になった人間でありました。そういう者からもいろいろ話を聞く中で、さらには私、県庁在職時代にこの仕事に4年間携わらせていただきまして本当にこの方たちが高知に帰ってきてよかったというふうに言えるようなことになってほしいと思っておりますので、ぜひこの点についてもまた今後ご検討いただきたいと思いますが、1つだけご提言をしておきたいと思います。
 実はこういった帰国者の方々が、帰国してくるには昭和49年が1つの節目なわけですけれども、それ以前にもし帰ってきていたとしたら、どれだけの県予算の1人あたりの支出を受けることができていたのか、そういった方々が。そういふうに計算していくと約4億9000万円の県予算のサービスを受けることができていたはずだと、それを例えば財源にした形で考えればこれから20年に渡って現在高知県に在住している68人の方に月3万円を支給していくということも可能だというふうに勝手な試算を私はしました。結局引き上げてこれなかったために受けられなかった県のサービスを、今からそれを給付していくという考え方に立てないのかなというふうにも思ったりしております。これは要望ですのでまたぜひ切って捨てるのではなく、今後の検討の材料にしていただきたいというふうに思います。
【橋本知事答弁】
 ご質問ではございませんでしたけれども、充分その思いを受けとめて、また何ができるかどうか検討させていただきたいと思います。

 最後に、知事の政治姿勢と県政運営についてお尋ねします。
 知事は、これまでの間、常に「しがらみ」のない自分だからこそ、県政改革を行ってこれたということをおっしゃっています。そして、「多くの県民が求めているのものは第三者的な目で組織を指揮できるリーダーではないかと感じるようになった」ともおっしゃってこられました。しかし、そのようなスタンスをとっていることも含めて、県政運営において、また、自らの政治姿勢において責任の取り方が曖昧だと受け止めざるをえないことが続いております。今回のグリーピア土佐横波の破産問題についても、知事の姿勢に責任を感じることができません。
 知事のいう「しがらみ」は断ち切ってこられたかもしれませんが、新たな「しがらみ」ができているという県民の声もあることを忘れずに頂きたいと思います。朝日新聞の知事支持率調査では、当選4回以上の「多選組」では橋本知事も含めて、7人中4人が不支持率上位10位にランクインしていると報道され、橋本知事は不支持率第7位となっています。そのような結果を見たとき、私が前回指摘しました多選の弊害を県民・有権者が受け止めつつあるのではないかとも考えていますので、まず、述べておきたいと思います。
 さて、知事が議会の質問日程を変更してまで臨んだ全国知事会議で、知事は何故、三位一体改革の議論で一言も発言しなかったのか疑問に感じていたところ、ホームページで「僕は、この問題では、加戸知事とは、少し異なる考え方を持っているのですが、加戸さんには日頃から、四国の知事仲間として、公私ともに大変お世話になっていますので、お隣りの席で、熱弁をふるう加戸さんの姿を見ていて、ものが言いにくい感じになってしまったのでした」というようなことが書かれていました。
 二月予算委員会でも浜田議員が「三位一体で切り捨てられようとしている地方のものとして、そういうわけにはいかない、そんなことは許さないぞということで、一揆とは言わないけれど行動を起こすべきだ」と指摘もしましたし、知事も、この間、折に触れて三位一体改革の趣旨に反する今の政府のやり方に問題提起をしてきたし、昨日も三位一体改革に関する考え方を披瀝されているわけで、それが、行動を起こすどころか、愛媛県知事が隣に居たということが理由で、何も発言せずに傍観していたということは事実でしょうか。
 そして、その理由が事実だとすれば、県民に対して責任を感じることはありませんか。お伺いします。
 次に、現在、坂本ダム等に関する調査特別委員会の調査活動も終盤を迎え、8月5日には知事本人にも証人として出席を願うこととなっていますので、詳細はそこでお尋ねすることとしまして、6月中旬に公表された高知新聞社による「100条委員会調査に関する世論調査」についてお尋ねします。この中で、100条委員会調査に関して、知事の姿勢を尋ねたところ、「説明責任を果たすべき」との回答が53.6%「何らかの結果責任を取るべき」との回答が14.5%で「知事に責任はなく妥当な姿勢」と「昔のことなので知事の姿勢は仕方がない」という容認姿勢は二割足らずであったという結果が出ています。このような結果に対する定例記者会見での知事のコメントは、アンケートの設問に問題があるかのような、極めて第三者的で知事という責任あるもののコメントではないように思いますので改めてお聞きいたします。
まず、100条委員会の場で質問に答えることは、説明責任を果たすことにはならないと自らおっしゃっていますが、それであれば、8月5日を前後して、いつの時期にどういう形で説明責任を果たされようと考えているのかお聞きします。
 また、いずれにしても、説明責任を果たすためには、自らも調査することがなければ、説明責任を果たせないと思いますが、自らの調査なしに説明責任を果たせるとお考えなのかお尋ねします。
 次に、知事部局対象の「人事に関するアンケート」についてお尋ねします。このアンケート結果が公表されたとき、知事は自らのホームページで「「今の仕事のやりがい」に対してやりがいを「感じる」または「どちらかと言えば感じる」と答えた人が、あわせて65.8パーセントで、割と率が高いなというのが、正直な印象だ」と感想を述べられています。一方、総務部長は総務委員会において「三割がやりがいを感じていないことは、組織として大きな問題を抱えていると受け止めている」と述べられました。
 これから「人の力、知恵の力」で仕事をしていこうと言うときに知事のような認識でよいのでしょうかお尋ねします。
 しかも、「やりがいを感じている」という回答層で全体よりも肯定的回答が多いのは、管理職層であるということにも、現在の組織のありかたに問題を感じます。一方で、今の県庁組織で、「管理職があまり責任をとらない。県民や、職員の方を見ずに上ばかり見ている管理職が多い」という声が出ていることにも思いをはせることが必要だと思います。
 いずれにしましても、三割の職員に、ましてや中堅事務職という層に意欲が感じられていないとしたら、どこに問題があると受け止めているのかお尋ねします。
 また、自らのリーダーシップに問題はないのかと自省している点はないのかお尋ねします。
 その上で、単なる意識改革という言葉でなく、具体的に「仕事にやりがいが感じられるような」県庁組織にするための改革をどのように進めるのかお尋ねいたします。
【橋本知事答弁】
 あの会議では議論に入る前から改めて来月に意見集約のための会議を開催することが決められていましたので、当日の会議は結論に関わりなくそれぞれが意見を出しあう場になりました。そうした中で様々な論点について積極的な意見が出されましたが、私と同じ考え方も数多く出されていましたので時間の制約があることも考えてあえて同じ意見を繰り返すことは避けました。
 その際、義務教育費の国庫負担金の問題に関して、お隣におられた加戸知事の熱い思いに自分なりの心づかいをしたことは確かですが、そのために言うべきことを言わなかったということではありません。会議を通じて出席されたそれぞれの知事の思いや、全体の雰囲気は充分に感じ取ることができましたので、意見の集約に向けて県民の皆様の代表として充分な役割を果たしていきたいと思います。 
 百条委員会のアンケートにつきましては説明責任と結果責任という全く性質の異なるものを一括りにする形になっていましたので、少々無理のあるまとめ方ではないかと思いましたし、そのことを会見の席でも申し上げました。また、その世論調査では53.6%の方が説明責任を果たすべきだと回答されていましたが、私はこれまでも機会を見て県民の皆様に説明責任を果たしていきたいと申し上げていますので、自分の思いにも沿った結果だと受けとめています。ただ、説明責任を果たすべき時期や方法はまだ具体的には決めていません。
 一方、指摘されています問題は、何分にも13年近くも昔のことですので関係者の記憶も極めて曖昧になっていますし、逆に今になって当時のことを語ろうとされる方の中には様々な思惑が重なってくることも否定できません。ですから言われるような調査といったこととは別に、自分なりにできるだけの説明責任を果たしていきたいと考えています。
 「人事に関するアンケート」の結果に対して、私のリーダーシップに問題がなかったのか、また自ら反省をしないのかというお話もありましたが、私は常に県民の皆様の側に軸足を置いて仕事を進めてきましたし、職員にも常に県民の皆さんの視点に立って仕事をするようにと語ってきました。65.8%を高いと思うか低いと思うかにはいろいろなご意見があると思いますが、およそ3割がやりがいを感じていないという結果は現実として受けとめて、少しでもこの数字を減らすように努力をしていかなければならないと考えています。
 また、アンケートの結果を詳しく見てみますと、あまりやりがいを感じていない事務の職員、中でも中堅や若手にあたる職員の多くが仕事の成果や実績が上がらないので達成感がないとか、仕事の内容がサービスの対象者に喜ばれていないといったことをその理由としてあげています。考えてみますと事務の仕事には庶務や経理のように県民の皆様と直接に向き合うことのない仕事や、許認可事務等法令に基づいて確実にこなしていくことが求められる仕事がいくつもあります。ですからそのような仕事に対しましても、職員がやりがいを感じられるようにすることが大切ですし、そのためにはそれを成し遂げたことを適性に評価するだけでなく、その評価を職員にきちんとフィードバックしていかなければなりません。
 また一方で、希望しない仕事や自分に向かない仕事をしていることを「やりがいが感じられない」理由にあげている職員も少なくありませんでした。このため評価の仕組みだけではなく人事に関する職員とのコミュニケーションのあり方等も含めまして、先ほどお答えをしました人事制度の見直しを進めます中で職員のやりがいを高めるための工夫をしていきたいと考えています。と同時に行政を取り巻く厳しい環境の中で、職員にも様々な不安があると思いますので所属長には職員が気楽に相談ができるような、風通しのいい職場の環境づくりに努めてほしいと思います。
 さらに仕事にやりがいを感じられるような県庁組織にするために改革をどう進めるのかとのお尋ねもありました。今後は職員一人ひとりが住民の目線と立場に立って自ら考えて行動することが一層求められてくると思います。このため県庁という組織として職員をどのように育てていくのか、またどのような人材を育成していくのかが重要だと思いますので、先ほど申し上げました人事制度の見直しの中であわせて具体的な検討をしていきたいと思います。 
【坂本県議再質問】
 100条委員会調査アンケートに関しまして、説明責任を果たすために調査というのはもうしないでいいというふうに考えておられるのかどうかだけご答弁をお願いしたいと思います。
【橋本知事再答弁】
 調査をしなくていいというような意味合いではなく、13年近くも前のことですので調査をしようと思ってもできないような、また、極めて曖昧になっているような事実が多いという主旨を申し上げました。