10月1日(本会議・代表質問)

9月定例会議事録集

「詰めきれんかった」

 私にとって初めての代表質問、50分が少し短いように感じました。慣れないので時間配分がうまくできず、再質問などで詰めきれずに反省しています。次に生かしたいと思います。

質問事項
@南海地震対策について 
A三位一体改革に向けた政策協議とその対応
B高知医療センターの果たす役割とその将来について
C男女共同参画社会づくり条例に実効性を持たせるように
D残業解消で雇用拡大の対策を
E知事の政治姿勢

@南海地震対策について 
 私は、県民クラブを代表いたしまして、県政課題の何点かにわたって質問をさせていただきます。
 まず、最初に南海地震対策についてであります。知事をはじめ執行部の考え方をお尋ねしておきたいと思います。
 来るべき南海大地震の発生の確率や被害想定なども徐々に県民の間に浸透し始めています、が、その割に県民の防災意識の喚起や県の地震対策の強化などについては、まだまだ緒についたばかりだと思われます。その意味で、本県の本格的な南海地震対策は、まさに、これからであって、最も財政的に厳しい状況にあり、地方自治体のありようが市町村合併をはじめとして大きく変化しようとしているだけに、具体化にあたっては大きな障害もあろうかと思われますが、如何に効果的な対策を講じるかということが問われています。
 さて、予知が不可能な南海大地震については、事前の地震対策こそが、減災につながることは明らかになっています。その際の県の姿勢の柱として必要なのは、自助・共助も大事ではありますが、それのみに責任転嫁するのではなく、一つに「一名たりとも死者を出さないぐらいの決意による予防策」二つに「地震発生後の災害対応に必要な社会機能に被害がでないようにする」三つに「防げなかった被害の機能回復、復旧・復興に必要な対策を整えておく」ということであります。
 そして、私は、防災を第一に考える施策は人を大事にする県づくりであると思っています。そのことを念頭に置いた場合、高齢者・障害者などの要援護者いわゆる災害弱者への充分な配慮は欠かすことが出来ません。阪神大震災では死亡者の年齢構成をみると60歳以上が53%と圧倒的に多くなっています。そして、障害者が218人となっています。また、生活保護世帯の死亡率は神戸市民一般の死亡率と比べて5倍弱の1.24%となっており、生活保護世帯住宅の42%が全半壊したと報告されています。これらの災害弱者への対策は、これまで学んできた先進地である静岡県や三重県、さらには避難が明暗を分けた奥尻島でさえ、その点が不十分であると言わざるを得ません。このことは、これからの施策の中の重要な視点だと思っていますので、ソフト・ハード整備の際の柱として検討して頂きたいと思います。
 また、この間、私が県民のみなさんに三項目を選択するアンケートをとった際の回答として、要望が多い順に@県民用地震対策マニュアルの策定と配布60%A避難場所の確保46%B住宅の耐震化 45%
C避難経路の安全確保と明確化38%D自主防災組織の組織化と活性化28%そして、最後に高速道路の整備7%となっています。そこで、これらのことを踏まえて次の課題について、県の姿勢を尋ねておきたいと思います。
 まず、予防としての、地震対策を充実させることで地元企業・業者の活用と雇用拡大などにつなげていく決意を持って望んで欲しいと言うことです。
 例えば、昨日朝比奈議員が指摘された北海道南西沖地震の際の奥尻島の例や、阪神・淡路大震災での被害総額約10兆円に対して復興支援事業費が17兆円にのぼると見込まれていることなど、そして、予測される東海・東南海・南海大地震の同時発生では、先の中央防災会議の想定で経済損失が約80兆円という莫大な金額が報告されています。このように過去の例からも復興策には常に被害総額を上回る財政措置が必要であるとすれば、少しでも復興支援策にかかる膨大な費用を軽減することも財政論からすれば考えなければなりません。そして、復興支援策に巨費を投じた場合、短期間での復興事業を担わなければなりませんので、それらはその力を持った県外大手企業に発注され、財政支出のほとんどが県外に吸収されてしまうということにもなりかねません。
 その意味でも、予防策としての耐震診断・耐震補強とか避難施設・避難道の確保とかは地元企業・業者で十分対応できることでもあるし、その経済効果・雇用拡大による県内経済への影響は大きいものがあるのではないかと思います。ちなみに県内には耐震上問題のある恐れが高い1981年以前に建設された木造住宅が約14万戸存在すると言われています。例えば、一年前に県内四カ所の住宅密集地で行った耐震診断で79%の家屋で倒壊の危険性があるとの結果が出ている中で、仮に14万戸の79%が静岡県の平均実績額である190万円ほどかけて耐震補修を行えば、約2、101億円の市場が生まれることになり、そこから試算をしていただくと、その経済波及効果は約3、446億円となり、生産誘発倍率は1.64倍となります。
 そこで知事にお伺いしますが、一定の時限的計画により予防対策にウェィトを置くことによって、県内経済への影響を高めていこうという計画を策定してはどうでしょうか。
 そして、その際には、知事の公約的なものにも多少触れられていますが、耐震診断や耐震化工事、さらに避難場所の建設など県が発注する工事は、県内業者に限定した事業発注とする決意はいかがなものでしょうか。       
 さて、先程も述べましたように、私のアンケート調査では、県民にとって最も望んでいるハード面の充実は避難場所の確保であり、避難路の整備であるとの結果がでています。津波対策としてはとにかく、「近くて・高い所」との鉄則があるわけですから何としてもこれについては県民の要望に応える対応をしなければなりません。
 私が住む高知市内下知地区にお住まいの方から頂いた手紙には「下知地区には避難場所が少なすぎます。各町内に一カ所は欲しいところです。私どもは高齢者で、身体障害者の主人と二人なので、多分避難することはできないと諦めています」と書かれていました。県民に諦めを生じさせるような対策ではいけないと思うのです。
 しかし、避難するためにはまず揺れが終わったときに避難できる状態でなければならないということです。そのために住宅を倒壊させない、また家は倒壊しても揺れの後で逃げ出せる対策が必要です。耐震補修がどうしてもできない人については静岡県での導入が進められている防災ベッドをはじめ家屋内の安全場所の確保をすることなどの対策も求められます。
 そこで危機管理担当理事にお尋ねします。他県では企業との連携で情報の共有や避難先の提供が協定化され始めています。本県でも、避難場所を新たに設置するとなると大変な財源を伴うので、耐震性のある民間ビルやマンションなどと提携し、避難場所として確保した上で、新設の必要な地区に避難所建設をしていくなどを考えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 そして、公的な避難施設として、大きなウエィトを占める公立小中学校では耐震化率が40%にとどまっていますし、県立学校においても、第一次の耐震診断を実施している状況にあると伺っています。とりわけ、学校施設は災害時に避難所になるわけですから、避難所足りうるためにも、揺れで倒壊してしまってはなりません。また、平日の昼間に発生すれば授業中の生徒が真っ先に命の危機にさらされるわけですので、学校施設の耐震診断及び耐震化については、県民のみなさんが早期に待ち望んでいることです。現在の県立学校施設の耐震診断の進捗状況と把握可能な公立小中学校の進捗状況、そして今後の耐震化に向けた見通しを教育長にお尋ねします。  
 あわせて、阪神大震災の被災体験をもとに神戸市教育委員会による学校現場の被災時のノウハウを伝授する大震災対策事業が始められていますが、被災時の学校運営に携わる先生方や協力すべき保護者の皆さんの学びの場として地域に開かれた学校づくりの中などに、これを取り込んでいくことは検討できないでしょうか、お尋ねします。 
 最後に、私の方から提案させていただきたいことがあります。高知県の南海地震対策姿勢を明確にするとともに、市町村の決意、県民の自覚を促す意味で仮称ではありますが「南海地震対策推進条例」の制定を検討されてはどうかと考えます。
 これまでに述べたことを踏まえたときに、私としては高知県としての防災力を高める。そして、被災時のいのちと財産をどのように守るのか。被災後どのように社会機能を回復させるのか。そして、生活と社会をどう再建・復興するかまでを見通した柱を条例化することが求められていると思います。
 県としての、県民の防災意識を高め、防災政策を継続的・戦略的に実施するためにも、戦略を立法化する条例は有効であると考えます。地域防災計画によって、具体的な詳細事項を決定するとしても、骨格となる部分を条例で定めることは、法的根拠も有するし、一定の拘束力を持つことによって、組織整備、予算化、具体的施策の決定、実施、評価を適正な手続きで進めていくための法的保障ともなります。他県でも「静岡県地震対策推進条例」「埼玉県震災予防のまちづくり条例」などと参考になる取り組みはすでにあります。そこで、知事にお伺いします。
 本県として、県民参加のもとに条例づくりに取り組む考えはないでしょうか。
 また、県条例や防災計画、マニュアルを踏まえた地震対策を県民に浸透させるための広報の工夫や自己満足に終わらない啓発パンフの作製・配布を行う中で、県民の安心と安全を確保すべきと考えますが、危機管理担当理事にその決意をお伺いします。      
【橋本知事・答弁】
 坂本議員の質問にお答えをします。
 まず、南海地震対策に関しまして、予防対策にウエイトを置くことで県内経済への影響を高めてはどうか、とのお尋ねがありました。南海地震対策は、まずは、地震から命を守るためのソフトやハードによる総合的な予防対策を優先的に進める必要があると思います。 また、対策を進めるにあたりましては、自分の命は自分で守るという自助や地域での支え合いとしての共助をもとに、避難訓練などのソフト対策を中心に取り組むことが重要です。あわせて、個人の住宅も耐震診断などを通じまして、順次、耐震化を進めていく必要があります。
 一方、非難をするための道路の整備や公共的な建築物の耐震化といったハードの対策は、行政が中心になって進めていく課題です。ただ、私の政策案の中でも触れましたが、こうした取り組みを進める際には、ご指摘にもありましたように、本県の経済への効果を絶えず考えていく必要があると思います。
 次に、県が発注する工事を県内の業者に限定して発注してはどうか、とのお尋ねがありました。
 県が行います公共工事の発注は、平成12年の9月県議会での公共事業の県内業者への優先的発注ならびに、地元産品の優先使用を求める決議を踏まえまして、県内の業者の育成と技術力の向上を図ります観点から、県内の業者を優先することを基本原則にしています。また、県内の企業への優先発注は、地域の経済や雇用を拡げる効果も持ちますし、県内産業の発展のためにも大切なことです。このため、公共施設の耐震補修や避難施設などの震災対策に関しましても、工事の内容や規模に応じまして、県内企業でできるものは優先的な発注に努めていきたいと思います。 
 次に、南海地震対策を推進するための条例を制定してはどうかとのお尋ねがありました。
 ご質問の中にもありましたが、すでに静岡、東京それに埼玉の3都県では、地震に関する条例が制定されています。このうち、静岡県では20年来にわたって地震対策を進めてきます中で、平成8年3月に住民の自主性や自助を促進して、県民の合意に基づく地震対策を進めることなどを目的に制定をされています。ですから県民の皆様とともに、南海地震に備えるという意味では、こうした条例も有効な方法の1つだと思います。ただ、こうした条例の制定には、県民の皆さんをはじめ、市町村や防災関係機関、それに企業など多くの方々のご理解が必要ですし、静岡県のように20年来とは言わないまでも、ある程度の取り組みの積み重ねが前提になるのではないかと思います。
 このため、まずは先ほど申し上げましたようなソフトやハードに渡る予防対策に取り組みますことで、県民の皆さんに次の南海地震に対する理解を深めていただくことが重要です。こうした取り組みを進めましたうえで、お話にありましたような条例の制定を検討していくといった段取りで、考えていきたいと思います。
【宮崎危機管理担当理事・答弁】
 南海地震対策についてのご質問にお答えします。
 まず、津波避難場所に民間のビルを活用することなどについてのお尋ねがありました。
 津波からの避難場所として、地域にある民間ビル等を使えるようにすることは大事なことと考えています。避難場所や避難経路は、まず地域の住民の方が主体になって話し合いの中で定めていくことが、地震発生時の適切な非難行動に結びついていくものと考えています。こうした地域での話し合いには、ビルやマンションなどを所有する民間事業者も地域の一員でありますので、そうした場に主体的に参加されることが望まれます。すでに、安芸市・須崎市・宿毛市では、民間の建築物等を津波の避難場所として利用する取り組みが進められております。
 これらの取り組みを県内全ての沿岸地域に拡げていくことが必要だと考えています。こうした取り組みによっても、地形や津波到達時間等から非難所が確保できない地域については、新設等を課題として対応していかなければならないと考えています。
 次に、県民への広報や啓発についてのお尋ねがありました。
 県民の皆さまが次の南海地震について正しい知識を身につけ、いざというときに適切な行動を取ることができるようになることは、地震対策を進める基本であり、大変重要なことだと考えています。これまでも県民啓発のためパンフレットなどを作成し配布してきましたが、特に本年度は広く県民に南海地震の姿を知っていただく啓発用のビデオ番組を作成し放映しますとともに、その番組をビデオ化して広く県民の方に貸し出すように現在準備を進めています。また、県の広報誌「SUNさん高知」に4月から地震コーナーを設け、地震や津波に関する基礎的なことについて毎月連載をしています。その他、研修教材の作成も進めています。この中では絵や図表を多く使い、理解のしやすい内容としています。
 今後とも様々な工夫を加えながら、県民の皆さまが南海地震を正しく理解し適切な行動を取ることができるような広報や啓発に努めてまいります。以上でございます。
【大崎教育長・答弁】
 学校施設の耐震診断の進捗状況および、今後の耐震化に向けた見通しについての質問にお答えをします。
 まず、県立学校の耐震診断の進捗状況ですが、平成15年4月1日現在で4.1%の実施率となっております。本年度20校28棟の耐震診断を行いますので、これが完了しますと実施率は11.8%となります。なお、平成19年度までの5年間で耐震診断を完了する予定でございます。
 次に、本県の公立小中学校の耐震診断の進捗状況ですが、文部科学省が公表しました調査結果によりますと、平成15年4月1日現在で15.3%の耐震診断実施率となっており平成17年度までの3年間で耐震診断を完了する計画でございます。なお、公立小中学校の耐震診断を促進しますために、本年度は南海地震に備えて市町村や学校組合が実施する耐震診断費用の3分の1以内を、県単独で補助する制度を創設しております。
 今後の耐震化の見通しは、県立学校では耐震診断の結果を踏まえ、改築や補強といった耐震化計画を策定します。この計画の策定にあたりましては、避難場所に指定された学校や、盲ろう・養護学校を優先します。また、公立小中学校は設置者である市町村が国の支援が受けられますように、引き続き必要な助言や支援を行っていきます。学校は多くの児童・生徒が1日の大半を過ごす学習や生活の場でありますとともに、地域住民の緊急避難場所としての役割も果たしておりますことから、その安全性の確保は私も大変心にかかっている課題でございます。一生懸命にやります。
 次に、阪神大震災の被災時のノウハウを、開かれた学校づくり等の中に取り込んでいくことについてのお尋ねがございました。
 開かれた学校づくりの中で、南海大地震に備えて学校現場での被災時の様々な対応のノウハウについて、保護者や地域の方々とともに学んでいくことは大変重要なことだと考えます。神戸市教育委員会が計画をしております、学校の防災危機管理研修支援事業の導入につきましては、積極的に検討いたします。以上でございます。
【坂本県議・再質問】
 ご答弁をいただきましたが、再度の質問をさせていただきたいと思います。 
1つは南海地震対策でございますけれども、ソフト面におきましては自助・共助の部分が取りわけ強調されるわけですけれども、私は先ほども述べましたように自助・共助・公助この3つの中で自助が大きくウエイトを占めるということは承知しております。ただ、そのことによって公助の部分を軽視しないでほしい。取りわけソフト面においても自助・共助を強調されるわけですけれども、例えば先ほどお話のありました沿岸部での民間ビルも含めて、庁内でいろいろ話合いをしてもらったらいいというお話もありました。さらには自主防災組織等についてもソフト面だと思います。しかしそういったことも、やはり地域にはノウハウがないときには、なかなか自助だけではなし得ない部分というのがあるわけです。
 私も先日、ある庁内の方から避難訓練の仕方についてご相談を受けました。しかしやはり、これは高知市の対応になるかと思うんですけれども、その点につきましてやはり地域で避難計画を立てて、ご相談をいただいたら相談にのりますということですか?じゃあ避難計画の立て方自体にね、地域の方はノウハウを持ってないということも有り得るわけです。今大変まあ高知市で注目されております種崎の自主防災組織にしても、これはご存じだと思いますけれど、高知市がずっと長期に渡ってテコ入れしてきた地域だと思うんですね。そういう意味ではソフト面も決して自助・共助部分だけに責任転嫁するのではなく、控除の部分でそこに手を差し伸べるということについて充分配慮いただきたいということを述べておきたいと思います。
 知事のご答弁の中で条例化の部分ですが、お聞きしておきたいと思うんですが、これは多少まあ、時間はかかるかもしれない、これからいろんな実績を積み上げていく中での時間はかかるかもしれないけれども、そういう手法を取っていきたいというふうなお考え方というふうに受けとめてよろしいでしょうか?私も直ちにということはなかなか無理な面があるかもしれませんけれども、変な話、たまごが先かにわとりが先かじゃないですけれども、やはりそういうことで県としての姿勢を示す、そのことがやっぱり県民の意識高揚につながっていくという面があるんじゃないかというふうにも思いますので、ぜひその点については近い将来、そういうことの具体化を図りたい、その旨の検討をしていきたいということの受けとめでよろしいのかどうかをお聞きしておきたいと思います。
【橋本知事・再回答】
 坂本議員の再質問にお答えをいたします。まず、南海地震対策の条例化についてのご質問でございます。
 ご質問のご主旨の通りこういう手法を取っていきたいと思います。ただ、いきなりというわけにはまいりませんので、一定やはり住民の皆さん方の思いと活動のレベルが高まってきたところで、そういう活動だとか認識のレベルが落ちないように条例というものをつくって、さらに次のステップに進むと、そのような位置づけで条例化というものを前向きに考えていきたいと思っています。

A三位一体改革に向けた政策協議とその対応
次に、三位一体改革に向けた政策協議とその対応についてお伺いします。
 知事の提案説明にもありましたように、三位一体改革による行財政制度の見直しが図られようとしている中で、中期的な見通しとして本県における財政規模縮小の課題が差し迫っているということで政策協議が8月来行われてきたことが報告されてきました。
 そして、一般財源500億円減という背景を踏まえた2007年度に向けた本県の行政組織の在り方についての方向性と行政経営方針が見いだされようとしています。現在の議論状況では、具体的な方向性は未だという感はしますが、優先度の高い政策は来年度に反映するということですから、その点については、そろそろ具体化し始めていると思われますので、基本的な考え方についてはお示しいただきたいと思います。
 さて、現状の各部局の生データを見させていただいた段階で特徴的なのは「選択と断念」による行政のスリム化を強調するあまり、県としての公的責任の形骸化につながるのではないかと感じました。確かに、一般財源が縮小される中で持続可能な高知県をどう作り出すかということを考えたときに、選択の上、断念し方向転換を図ることも必要ではあるかもしれませんが、その際に市町村、地元企業、県民に自立のみを強いることではいけないと思います。県として果たすべき役割を明確にした上で、選択・断念を行う際の前提としている「県民の納得性」を重視していただきたいと思うのです。
 例えば、職員定数・組織の在り方では5年間で410人10%を削減目標としており、そのためには業務の徹底した絞り込みと効率化を図るとともに、出先機関の統合を命題としています。
 しかし、その方法は各所属の業務量を踏まえた定数配置でなく、つかみで削減する総枠方式をとるという、いかにも現場と県民を無視した方向への転換と言わざるを得ません。これまで、9年間の間に580人が削減され、職場段階ではこれ以上の削減は無理だという悲鳴が聞こえています。そして、その一方で遅きに失した感はありますが、長期病休者の職場復帰支援策を講じなければならない状況を作り出す県庁組織になっているのです。それは、決して知事だけが「身を削る思いで全力投球」してきたのではなく、職員の皆さんも同じ思いで仕事をしてこられたからではないでしょうか。そして、出先機関の統合ということでは健康福祉部、農林水産部、土木部などで検討がされているようですが、これも一例をあげて視点の見直しの参考にしていただきたいと思うわけです。
 例えば、農業改良普及センターについての在り方では、耕地事務所との統合を図るとともに、林業事務所を加えて農林事務所化するという案などが述べられています。かつて、農業改良普及所を95年から97年にかけて9本所3支所の農業改良普及センターに改称・統合して以来、管轄市町村の広域化などに伴い、営農指導の後退などが見られた面があります。普及職員は本県の基幹産業である農業の振興のために、これ以上の後退をさせることは出来ないという思いで、昨年春に農家意向調査を行うとともに、それをもとに農家の方々と「普及事業に関する意見交換会」も開催しております。その中でも、これ以上の広域化は生産者にとって普及センターの役割が形骸化してしまうとの不安の声なども出されているとのことです。以上のことなどから、単純に出先機関の統合というのではなく、県民はもちろん、現場そして該当自治体の意見を充分に踏まえた在り方議論を進めていただきたいと思うのです。その上で、2007年以降の県政運営が厳しくとも、県民のサービスを後退させずに、市町村との連携が充分に取れ、職員がやる気を持って生き生きと働くことができる持続可能な高知県庁として再生できることを願うものです。そこで知事にお伺いします。
 まず、「地域の支え合いの仕組みづくりがうまくいくかどうか」ということが、知事の公約的なもののキーワードである住民力と同様の意味を持ちつつ、あらゆる局面に登場すると思うのですが、この地域の支え合いシステムづくりということの中で、地域に任せるだけではなく、県としての果たす役割をどのように考え、さらにどのように責任をとりながら進めていこうとしておられるのですか。単に、市町村に県職員を派遣すれば事足れりというものではないと思っています。そして、県民の納得性をどのようにして担保されるのか。また、その手法や検証方法をどのように考えられているのかお伺いします。
 さらに、職員配置の在り方については、上から総枠的に配置するような方法で、職場や県民に対して混乱を生じさせることはないのか。また、地財計画では地方公務員は、向こう4年間で4%以上の削減計画なのに、本県は何故5年間で410人10%削減なのか。単に525人の定年退職者が見込めるからなのか。総務部長にお尋ねします。
 この項の最後の質問をします。確かに、市町村合併などもあり県庁組織が現状のままでよいとは思いませんが、組織の在り方については、単に職員定数の削減のためということではなくて、先ほど農業改良普及センターの例でもお話ししましたように、県民、現場及び市町村の意見を充分に踏まえた上で、検討をするという姿勢はあるのか総務部長にお聞きします。
【橋本知事・答弁】
次に政策協議で議論しました、「地域の支え合いの仕組みづくり」に関しまして、県の役割をどう考えているのか、また、どのように責任を取りながら進めていくのか、とのお尋ねがありました。
 三位一体の改革に伴いまして、県の財政の規模が縮小していくことを考えますと、これまで県民の皆さまに提供してきました行政サービスを従来どおりに維持していくことは、言うべくして困難な状況になってきます。このため今後は、できるだけコストをかけずに県民の皆さまが満足感を得られますような、新しい形のサービスのあり方を探っていく必要があります。こうしたことから政策協議では、これからの県政の役割は町村をはじめ企業や団体、さらには県民一人ひとりの自立と協働を基本に、それに向けた意欲のある活動を支援していくことだ、との考え方を打ち出しました。例えば民泊という形で、多くの県民の皆さんのお力をお借りして成功することができた国体もその一例ですが、こうした自立と協働の関係を実現するための取り組みとして、住民が主体となった地域の支え合いの仕組みづくりを提案していくことにしました。
 この仕組みづくりを提案する背景に、財政状況の変化があることは否定できませんが、決して行政の責任を放棄したり、県民の皆さんや地域に負担を転嫁したりしようとするものではありません。と言いますのも、自主防災組織はもとより、地域の福祉や健康づくり、さらには道路や河川などの管理といった分野でも、住民の皆さんの主体的な活動が加わることによって地域の実情に合ったサービスを、より効果的に確保できる場合が少なくないからです。このため、こうした支え合いの仕組みづくりが各地に拡がりますよう、来年度は地域に派遣する職員を大幅に増やしまして、市町村や住民の皆さまの生の声を聞きながら取り組みを進めていきます。また、その進み具合も見ながら、市町村とも協力しまして、地域の自主的な取り組みと連携した活動を進めていきたいと思います。
 続いて、地域の支え合いについて、住民の納得をどのようにして得ていくのか、また、その手法や検証の方法をどう考えているのか、とのお尋ねがありました。
 お話のように、地域の支え合いの仕組みづくりが実を上げていきますためには、県民の皆さまのご理解と納得が欠かせません。では、この理解と納得を得るにはどうすればいいのかですが、そのためには地域の皆さんが、自分たちの地域の状況はどうなっているのか、また、自分たちの課題は何かといったことに、まずは関心を持っていただくことが大切です。あわせて、県職員自らが地域に入って住民の皆さん方と日常的に接しながら問題を投げかけ、ともに考えていくことが増々重要になります。この点で、これまでの行政の手法では組織づくりそのものが目的化してしまった結果、それが当初の目的に沿って機能しているのかどうかとか、目標が達成できているのかどうかといったことが、点検されていないきらいがありました。そうならないためにも、支え合いの仕組みに参加して下さる一人ひとりの住民の皆さんが、はっきりとした目的と目標を持ちながら活動できますよう、県としてもそのサポートを心がけていきたいと思います。
【池本総務部長・答弁】
 まず、職員配置のあり方についてお尋ねがありました。
 三位一体の改革が進められる中で、これからの県庁は思いきった事業や業務の選択と断念を行うことで、限られた資源を有効に活用していくことが求められております。こうした状況に的確に対応するためには、総職員数の削減は避けられませんが、職員定数の管理につきましては、業務の優先度を反映できる弾力的で柔軟な方法に変えていく必要がございます。このため、部局内の職員定数につきましては、予算と同様に各部局が自らの経営方針に沿って仕事そのものに優先順位をつけて絞り込み、適性に配置していくことにしております。
 また、総職員数の削減目標についてもお尋ねがございましたが、県の財政規模が縮小する中で、県民サービスの低下を招かないよう県として可能な限りの内部組織の簡素化や、事務の効率化を進めていかなければなりません。一方で組織の新陳代謝に必要な新規採用者の数も確保しなければなりませんので、そうしたことも勘案した上でギリギリの目標を掲げたものでございます。
 次に、県庁の組織のあり方についてお尋ねがありました。
 昨日、朝比奈議員に13時からお答えをしましたように、これからの行政改革は単に組織を変えるのではなく、仕事の仕方を変えるということに重点をおいて進める必要があると考えております。このため本年度の組織改正では、本庁の意思決定の迅速化や類似業務の一元化に取り組みました。各部局の事務所のあり方に関しましても、県庁全体の組織のスリム化の視点の他、縦割り組織での仕事の進め方から、地域全体を総合的に考え効率的に県民サービスを展開していくことを基本としまして、今後柔軟に検討していきます。
 次に、業務のアウトソーシングに関連しまして、私からは時間外勤務の時間数の推移についてお答えを申し上げます。知事部局の国体関係を除いた時間外勤務の状況は、職員1人当たりの年間時間数で申しますと、平成12年度は82.0時間、平成13年度は87.1時間、平成14年度は79.0時間となっております。平成14年度は対前年比で8.1時間、9.3%縮減されております。昨年度から実施しております、県庁の日常的・定例的な業務のアウトソーシングへの直接的な影響は、はっきりとはしませんが、アウトソーシングに取り組みました多くの所属からは、「勤務時間の縮減に効果があった」との声を聞いております。以上でございます。

B高知医療センターの果たす役割とその将来について
 続いて高知医療センターの果たす役割と将来についてお伺いします。医療の中心は患者さんであるという基本理念のもとで、医療の質の向上・患者さんサービスの向上・病院経営の効率化を基本目標に掲げた高知医療センターの施設も順調に建設工事が進んでいるようです。先日は、病室のモデル・ルームも見学させていただきましたが、知事はご覧になったでしょうか。さすがに、多額の費用が投じられているだけあって、たいへん立派なものとなっています。しかし、知事が公約的なものでも述べているように「病院のような施設は、暮らしの場所ではない」ものに、赤字覚悟で、ここまで立派な病室にする必要があるのだろうかという県民の声も聞きます。むしろ、一日も早く治癒するための医療サービスを提供する医師や看護師などの医療スタッフの充実を図ることの方が重要だと思います。また、医療の中心は患者さんではなく、立派な高知医療センターの院長室に座る予定の瀬戸山理事が主人公の病院ではないかという声も聞こえてくるだけに、いくつか心配な面もございます。
 さて、ようやく、高知医療センターの医療コアの概要も明らかになりました。しかし、高知医療センターが果たす役割として高度救命救急センター、地域医療支援病院、総合周産期母子医療センターなどが掲げられていますが、その機能がいつの段階で、本当に確保されるのかという疑問も生じ始めているのも事実です。
 そこで、二点について知事の決意と考えをお伺いします。
 まず第一に、知事は、公約的なものの中に高知医療センターのことは「残る三つの県立病院のこれから」の項で「高知医療センターの新設に伴って」という言葉としての記述で一ヶ所しか触れられていないのではないかと思います。このような知事の意識の中での位置づけを見たときに、現在以上に進行する県内の高齢化の中で、高知医療センターがどのような役割を果たすべきなのか、また、県の医療政策の中で中核病院として十分に位置づけらるべきであるが、そのことを重視されていないのではないでしょうか。本来なら、高知医療センターを軸として、これまでにも県の医療政策を担っていただいた県立病院以外の公的病院や民間病院とどう機能分担をしていくのかが明確にすべきではないかと思うのですが、知事はどのようにお考えですか。さらに、そのことは県の独断専行ではなく医師会や機能分担を担っていただく医療機関と十分に協議が整っているのかをあわせてお尋ねします。
 次に、これから病院組合議会10月定例会に向けて収支計画を明らかにされると思いますが、昨年の試算では開院からの16年間は赤字にならざるをえないとしています。それまでの間の赤字部分は県としてどう責任を持つのかということです。
 高度救命救急センター機能としては、高知医療センターが果たすということですが、救命救急センター機能は日赤と重複する以上、飛躍的に増大するとも思えない救急対応患者の受け入れによる収益が大きく伸びるとも思えませんし、両病院の共倒れすら危惧します。また、地域医療支援病院としての機能を果たすための外来紹介率80%という患者数は病診・病病連携の中で確保しうるのでしょうか。さらに、紹介状のない患者の特定療養費が患者の大きな負担になるのではないかなど医業収益の伸び悩みや患者負担の増大などに不安を感じます。さまざまな要素は考えられますが、これからの試算においても、このことが大きく好転するとは思えないのです。その意味では、高知医療センターの運営の中で、医業収益が大きく落ち込んだときに、どういう手だてが出来るのか。医業外収益として見込んでいる県からの補助金にしても、任意的な経費である他会計補助金としていつまで投入されるのか。さらに、それ以上の県費負担が可能なのか。もし、それがだめなら病院組合が金融機関から貸し付けを受けて対応するしかないのではないか。そうなったときに、17年後の黒字転換を待たずに、一部事務組合立の公的病院の運営が成り立たなくなるのではないかと心配してしまいます。その際、高知医療センターの建設・運営を受託する高知医療ピーエフアイの主体はオリックスグループであり、このオリックスの会長宮内義彦氏は総合規制改革会議座長を務め医療への株式会社参入を強く主張している人物だけに、オリックスグループ経営の巨大な民間病院が出来上がるのではないかと危惧します。
 そうなった場合、結果的に多額の公費を投じた民間病院をつくったということになりかねませんが、将来にわたって公的病院としての高知医療センターの医療サービスを県民に提供していくことを県民のみなさんにお約束が出来るのかどうかをお伺いします。
【橋本知事・答弁】
 続いて、高知医療センターの役割や医療政策上の位置づけ、さらには他の医療機関との機能分担の方向付けや協議の状況についてお尋ねがありました。
 先日公開されましたモデルルームの病室は、私も見に参りました。それはともかく、高知医療センターの担うべき役割に関しましては、長い時間をかけて県と市や医療関係者はもとより、医師会や関連の大学等の専門家にもお入りいただいて、検討を進めてきました。これを受けまして平成11年には、新病院整備基本計画が策定されましたが、この計画に基づきまして病院組合では先月、診療科の構成など、より具体的な医療の内容を公表しました。その中では医療センターが主に担う機能としまして、がん・循環器・母子医療・救命救急、それに地域医療支援の5つの機能が示されていますが、これらの機能は本県の医療政策にとりまして大変重要なものですので、保健医療計画にも位置づけています。
 また、医療センターは総合的で高度な医療に対応する病院として、また、地域の医療機関を支援する病院としての役割を担いますので、高知大学医学部付属病院等、公的な病院をはじめ、県内の医療機関等と役割分担をしていくことが欠かせません。そのため地域の医療機関と連携をした、協力し合うシステムづくりに向けまして、現在病院組合では県・市の医師会や歯科医師会と定期的な意見交換の場を設けて協議しています。さらにこの7月からは地域医療支援のあり方等、具体的な医療センターの運営について実務的に協議する場を設定して精力的に検討を進めています。
 次に、高知医療センターが将来に渡って県民に医療サービスを提供することを約束できるのか、とのお尋ねがありました。
 高知医療センターでは全国に先駆けて、病院運営に民間の資金とノウハウを活用します、PFIの手法を導入して効率的で効果的な病院運営をめざすことにしました。このPFIの事業計画は30年の長期に渡るものですが、その間は官と民が協力し合って万全の体制を取ることにしています。
 また、病院経営の中では今までのような経営体質に甘んじるのではなく、高知医療センターの職員全員が常に経営改善と、独立採算性の意識を持って取り組んでいくことによりまして、基幹病院としての医療の質の向上や経営の効率化を図りますことが、自治対病院としての使命を果たすことにもつながると思います。また、そうすることによって、県民の皆さんが期待する医療サービスが提供できるものと考えています。
【坂本県議・再質問】
 高知医療センターにつきましては、これまでいろんな関係機関等を含めて長い時間をかけて、この医療センターの機能について、あるいは役割についてご討議をされてきた
ということでありますけれども、その割に今、なかなか周辺の関係機関等についてのまあ、了解度合いというかですね、そういったものが高まってないんじゃないかというふうに私は感じておるわけです。ですから先ほど述べたようなことで言わせていただいたわけですけれども、ぜひこの医療センターが地域の医療機関、あるいは医師会等なども踏まえて充分な連携の基に機能が果たせるように、県として市と連携を取りながら充分にその役割を果たしていただくようにお願いをしておきたいと思います。
 それと知事が将来に渡って、自治体病院としての機能を高知県において維持されていくということで決意も示されましたので、そのことを期待しながら高知県の医療の中核となっていただいていくというふうに考えておきたいと思います。
【橋本知事・再答弁】
 続いて、ご要望でございましたけど医療センターに関しましては、私の政策案の中ではこれから変えていく部分ということを、やや中心的に書きましたので、高知医療センターはすでに軌道に乗っているという位置づけで、特段の触れ方をいたしませんでした。 ただ、ご要望としていただいたことは充分心に留めて、特に医師会等との連携を言われていると思いますけれども、こういう地域の各団体機関との連携ということには充分配慮をしていきたいと思います。

C男女共同参画社会づくり条例に実効性を持たせるように
 次に、執行部において、12月議会に向けた作業中であります男女共同参画社会づくりの条例についてお伺いします。現在、この条例案については、様々な視点からのご意見を伺いながら、よりよいものを策定されようとしていることについて、そのご努力を評価します。全国的には後発の条例化ではありますが、それ故に、立派なものとして高知県の男女平等社会を築いていく上での、あらゆる施策のバックボーンとなることを期待するものであります。これには六つの基本理念が掲げられていますが、私は、特に、今の雇用環境の中では、この条例を通じて女性が男性とともに働き続けられる社会環境が整備される大きな力になって欲しいと願うものです。
 女性が働き続けていくことは、もはや社会の大きな流れです。と同時に就労環境、家庭との両立、将来のキャリアプランなど働く上での悩みや課題は常につきまとっているのが現状だと思います。
 しかし、相変わらず女性には「仕事も家庭も」と過重な負担が求められています。家庭生活を見たときに、NHKの「国民生活時間調査」では女性勤労者の平日家事時間が173分で、それに対して男性勤労者は20分となっており、大きく女性に偏っていることは明らかです。そして、育児・保育における女性の負担は専業主婦・共働き女性に限らず、父親には期待できない状況になっています。子どもの教育分野においても、PTA役員などを担う保護者の圧倒的多数は女性に任せている面があるのではないでしょうか。さらに、高齢者の介護となると、主たる介護者は配偶者・子・子の配偶者を合わせた女性が三分の二を超えている状況にあるのです。
一方、職業生活においては、依然として昇任・昇格・給与体系などにおいて、国連の女性差別撤廃委員会からその立ち遅れを指摘されざるをえない男女差別の溝は大きく横たわっています。
 このような状況の中で、何点か根幹に関する部分について文化環境部長にお尋ねします。
 この条例はあらゆる局面における男女共同参画をなしえるために策定されるものですが、人権尊重、教育、農林水産業、商工労働、健康支援など各部局で県の施策として進められることが、この条例の趣旨に沿っているのかどうかをチェックする機能をどこに、どのような形で持たせるのでしょうか。また、市町村においても同様の条例化の動きも出てこようかと思いますが、市町村の条例制定への支援をどのように考えられていますか。  次に、今まで、「こうち男女共同参画プラン」では有効な手だてを持ち得なかった取り組みなども、今回の条例化で一定の有効性を持ちうるのではと期待しますが、教育機関や県内の事業者に対する現状調査などを行い、改善すべき事項を浮き彫りにするようなことができるのか、お伺いします。            
 事業所が女性も元気に働ける職場になっていくことは、事業所自体の活性化につながると考えます。また、雇用環境の改善が雇用拡大にもつながるのではないかと思いますが、この条例をどのように活用していきたいと考えているか商工労働部長にお尋ねします。 
 最後に、条例化にあたっては、さまざまな困難があるかもしれませんが、それを乗り越え、より望ましい全国に誇りうる男女共同参画社会づくり条例の制定を要請しておきたいと思います。
【尾崎文化環境部長・答弁】
 男女共同参画社会づくり条例に関し、各部局の施策がこの条例の趣旨に沿ったものになっているか点検する機能をどのような形で持たせるのか、また、市町村の条例制定への支援をどのようにしていくのかとのお尋ねがありました。
 これまでも毎年、高知男女共同参画プランの実施状況や進捗状況を取りまとめ、知事を本部長に各部局長で構成する男女共同参画推進本部に報告をし、また、県民にも公表するなど、プランの推進と実効性を確保してまいりました。今後は今回の条例制定の検討を機にプランの見直しとあわせまして、推進本部の機能についてもこの春、庁内組織として整備された各部局の企画調整機能を、推進本部の中にも取り入れていくといった方向で見直しを行い、予算の編成作業や事業を企画する段階から男女共同参画の視点が取り入れられるようにすることで、条例の実効性を確保していきたいと考えております。
 また、今回の条例では県の責務として市町村が行う男女共同参画に関する取り組みに対して、情報の提供や技術的な助言などを行うことも検討しており、市町村の条例づくりに対しても同様の支援をしていきたいと考えております。現在、高知市が県内で初めてとなる男女共同参画に関する条例づくりにも取り組んでおりますが、こうした動きが他の市町村でも具体的になるように、支援もあわせて行ってまいりたいというふうに思っております。
 次に、条例制定により教育機関や県内の事業者に対する現状調査などを行い、改善すべき事項を浮き彫りにすることも必要と考えるかどうかとのお尋ねがありました。
 今回検討しております条例がめざすところは、男女がともにその個性と能力を発揮できる機会が確保される社会をつくることであるというふうに思っておりまして、このことは県行政の各分野でも、こうした視点で男女共同参画を推進する取り組みが、今後一層進むものと思っております。こうした視点をこれまでより強く持って事業が進められることになれば、各分野では実態がより的確に把握されることにもつながりますし、改善すべき課題も明らかになってくるものと思います。そうしてこうした課題は、今後の取り組みにも反映されていくものというふうに考えております。以上でございます。
【起塚商工労働部長・答弁】
 男女共同参画社会づくり条例に関しまして、雇用環境の改善等に向けての活用についてお尋ねがございました。
 県では雇用環境の改善につきまして、企業の経営者を対象に国や関係機関と連携して各種の施策や制度の周知に努めてまいりました。ただ、しかしながら依然として賃金や待遇面での男女間の格差が存在していると考えております。働く女性が性別により差別されることなく、その能力を充分に発揮でき、仕事と家庭を両立できる雇用環境を整備していくことは、今後とも重要な課題だと考えております。
 また、少子高齢化が進む中で、これまで以上に女性がその持てる力を発揮し、社会に参加していくことは、活力ある社会を維持していくためにも大変重要なことだと考えております。こうした状況の中で、県では平成14年度から男女共同参画職場づくり事業費補助金を新設し、男性の育児休業や女性の職域拡大など、男女がともに働きやすい雇用環境の整理がされるよう取り組んでいきます。
 この条例が制定されますと、男女共同参画の基本的な理念が職場や家庭、事業主など社会全体に定着していくこととなり、このことによって企業における雇用や職場環境の改善にもつながっていくものと考えております。この条例制定を契機として雇用環境の改善をはじめ、仕事と家庭生活とのバランスの取れた男女共同参画社会への一層の取り組みに努めてまいります。

D残業解消で雇用拡大の対策を
次に、労働基準法を遵守することによる残業解消を図り、それを雇用対策につなげる施策の充実についてお伺いします。
 昨日8月の失業率が5.1%と若干改善されたとの発表がされましたが、決してそのような実感の持てない雇用状況にあります。特に、年齢階層別では最も失業率が高い若年層と家庭生活を維持する中年層が高くなっているのはご承知のとおりです。中でも、過労死や男女の性別役割分業の原因にもなっている長時間労働は、もう一つの側面として多くの人々の雇用機会を奪うことにもなっています。
 社会経済生産性本部は、かつてサービス残業を廃止すれば90万人、残業そのものを全廃すれば160万人の雇用が可能だという試算を発表しました。このことからも、サービス残業という違法行為がまかり通る社会の仕組みを変えることで雇用の拡大を図ることも考えてみるべきだと思います。
 2000年時点の総務省の労働力調査による労働者一人あたりの一年間の労働時間は2241時間、厚生労働省の毎月勤労統計調査による一年間の労働時間は1853時間で、その差の388時間は一人あたりのサービス残業と言わざるを得ない統計結果があります。
 そして、いま、結果として中部電力では未払い残業代9億3000万円、武富士では35億円、近畿大阪銀行では5億円を支払わなければならないことが報道され、さらに、東京都のある特別養護老人ホームでは是正勧告を受けたにもかかわらず虚偽の報告をするなどして残業代を支払わなかったことで経営者が逮捕されるという事件が今年のはじめに起こりました。さらに、厚生労働省の調査では一昨年の4月から昨年9月までの間に613社が是正勧告を受け、その額は約81億円にものぼったと報告されています。そして、県内では昨年一年間の労働局による是正指導が80社で、是正後に支払われた残業代は4700万円にのぼっていますが、これは表面化した氷山の一角にすぎないと考えます。
 厚生労働省の2001年4月の「労働時間適正把握基準」通達では「残業時間の自己申告制の場合、実際の残業時間を申告しても不利益な扱いをしてはならない」「またその場合、サービス残業を促すような残業時間の上限設定や残業手当の定額制を是正する」ことなどが求められており、「強制された自発性」によるサービス残業の主要な要因である自己申告制の矛盾を解明するところにまで立ち至ろうとしています。
 ところが、足元の県庁内を見たとき、どうなのでしょうか。これまで歴代総務部長は職員労働組合との交渉の場で、常に「サービス残業というものがあってはならないし、ないものと認識している。機会ある毎に所属長に事前命令の徹底をし、適正な時間管理に努めてきた。」と述べ、今年の一月には「時間外命令の取り扱いや実際に実効のあがった縮減への取り組みについて職員からの意見を、メールやファックスなどで受け付ける。その中で、予算がないから仕事をしても時間外勤務命令をしないと言ったような事案があれば、確認のうえ、適正な勤務時間管理がなされるよう話をしていきたい。」と述べてきました。
 しかし、その一方で、警察本部の捜査費による慰労会開催の議論を巡って明らかになった県警本部長・知事によってなされたサービス残業容認発言は看過できるものではありません。
 8月20日の総務委員会では、県警本部長自らがサービス残業という違法行為を認める発言をしたと認識しています。それは、「手当は予算の範囲内でしか与えられない。夜も寝ずに休日も返上している捜査員たちの士気を鼓舞するのは当然必要だと考える」というくだりです。そして、知事は8月25日定例記者会見における捜査費による慰労会の開催についてのコメントの中で、「警察職員が果たしている公益性の大きさや努力、時間外も十分に支払われていないという現状の中で、税金の使われ方として許される融通性もあると思う県民もいるのではないか」と答え、あたかも多額の未払いの残業代に変わって一人あたり3000円の飲食代でお茶を濁すことは安上がりの支出となるので、理解してくれる県民もいるだろうなどと、県民判断に委ねるかのような責任逃れのサービス残業容認発言をしています。私は、このことこそが、最前線で汗を流す捜査員を愚弄した待遇ではないかと思います。昨日、警察本部長は今後、県費による慰労会経費は支出しないと答弁されましたが、だとすれば今まで未払いだった時間外手当は支払わなければならないと思います。
 いずれにしても、このような感覚では、いくらきれい事を言っても、知事部局においてもサービス残業は存在するとしか思われません。これまでにも、様々な指摘がされていますが、執行部は所属長からの回答のみで事たれりとしてきました。本当に実態調査をする気があるならば、客観的な事実の照合がなされなければなりません。例えば、休日の入退庁記録と超勤命令簿の照合などは簡易な方法であるわけで、今こそ、このことを契機に県庁内から率先してサービス残業を解消するとともに、民間事業所においてもこのようなことのないよう喚起していく必要があると考えます。そこで、次のことについてお尋ねします。
 警察本部にはサービス残業が存在することを認めたと判断して良いのでしょうか。知事並びに警察本部長に尋ねます。     
 次に、サービス残業は、警察本部以外の知事部局をはじめ各局、各委員会などにも存在するとみなしてよいか。もし、そうでなければ、先ほど私が述べた方法なども踏まえて、その実態を調査した上で、サービス残業のない事実を明らかにすることを明確に示していただきたいと思いますが、知事はどうお考えでしょうか。     さらに、サービス残業をはじめとした残業そのものを縮減することによって実効のあがる雇用拡大策を真剣に検討されてはどうかと思います。もし、今までのアウトソーシング事業でそれを行っているとするのであれば、国体対応を除いた残業時間の実績の推移とアウトソーシングによる雇用人数と期間を総務部長及び商工労働部長に明らかにしていただきたいと思います。
 最後に、高校新卒未就職者を非常勤職員として、県に雇用したが年度途中における新規就職につながったケースがどれだけあり、今年度中にどれだけつながる見通しがあるのか、そのメリット・デメリットを明らかにするとともに、来年についてはどう考えているのかお考えを商工労働部長にお尋ねします。
【橋本知事・答弁】
 続いて、先日の記者会見での発言は、警察本部にサ−ビス残業が存在することを認めたものか、とのお尋ねがありました。
 言うまでもなく警察の職員の職務は、何時いかなる場合でも事件や事故に適切に対処しなくてはいけませんし、街頭での勤務が多いという特殊性もあります。こうしたことから時間外勤務の把握が困難なことや、手当の支給の前提になります事前の職務命令が充分にできないことも承知をしていますので、手当が充分に支給されていないのではないかとの感想を申し上げました。
 次に、知事部局などの残業についてお尋ねがありました。
 時間外勤務はサービス残業となりませんよう、時間外勤務の命令に基づいて行う必要があります。このため管理職員には、事前命令の徹底を機会あるごとに指導していますし、知事部局では事前命令に基づいて勤務がなされているかどうかの抜き打ちの調査も行っています。その結果からも時間外勤務命令は、適切に行われているとの報告を受けています。
 今後とも業務の見直しや平準化、それにアウトソーシングの推進等によりまして、時間外勤務の縮減に取り組んでいきます。
【起塚商工労働部長・答弁】
 次に、残業の縮減による雇用の拡大策の検討とアウトソーシングによる雇用人数についてのお尋ねがございました。
 県では厳しい雇用の状況に対する取り組みとして、平成13年10月に雇用対策本部を設置し、緊急の対策を中心に対応を行ってきました。この中の1つの取り組みとして、平成14年度から職員が日常行っている業務の内、可能なものについては積極的にアウトソーシングを行ってきました。その財源の一部は時間外勤務の削減により対応しておりますが、こうした取り組みは来年度も引き続き行っていきたいと考えております。
 また、お尋ねのアウトソーシングによる雇用の実績につきましては、平成14年度は71の事業を行い、それぞれの事業の従事者数は延べで2119人(人日)となっております。平成15年度につきましては、91の事業を計画実施いたしております。
 次に、今春の県内の新規高卒者を対象に県が雇用した非常勤職員についてのお尋ねがございました。
 県が今年4月に非常勤職員として雇用した46名に関しましては、1名が進学、2名が就職により退職しているため、現在43名が本庁各課室や出先事務所で勤務いたしております。これら非常勤職員には早期の就職を期待していますが、希望職種が特定できていない方が当初大半であったため、まず仕事を通じて働くということの意味を繰り返していただくとともに、アンケート調査等により現状の把握に努めて、本人の状況に応じた研修・相談などを行って参りました。現在では公務員志望を含め約80%の方が希望職種を特定できるようになり、公共職業安定所等を通じまして、現在就職活動に取り組んでおります。
 今後ともこれら非常勤職員の就職意識の一層の向上に努めますとともに、積極的な就職活動を促すなど、早期就職へ向けた取り組みを進めてまいります。また、来年度に関しましては、今後、予算編成作業を進めていく中で本年度の事業の成果や、来春の卒業見込みの高校生に対する求人の状況などを踏まえまして、高知労働局・県教育委員会等の意見も聞きながら検討してまいります。以上でございます。
【黒木警察本部長・答弁】
 坂本議員の警察本部のサービス残業に関するご質問にお答えいたします。
 都道府県警察官の時間外勤務手当につきましては、地方財政規約におきまして、本俸と調整手当の13%が措置されており、本県の時間外勤務手当も地方財政規約に沿って予算計上されているところであります。また、その支給は本来予算の範囲内で命ずべきものでありますが、現実には必ずしも予算の範囲内で時間外勤務を調整することが困難な場合がほとんどであります。本来時間外勤務は事前命令が基本であります。そのことは充分承知しておりますし、県庁職員と同じ一般行政事務については、時間外勤務の必要性などのチェック機能の強化や事前命令の徹底に努めているところであります。 
 しかし、警察の第一線の業務は、突発する事件・事故に直ちに対処し、これらの事件・事故が早期に解決を図らなければならないことから、時間外勤務の事前命令が困難な場合があります。過日9月28日、後免・奈半利線の奈半利駅で強盗事件が発生いたしました。当日は日曜日でございます。所轄の安芸署では直ちに休日・非番の暑員を非常招集して事件の捜査にあたりました。また、緊急配備や応援捜査のために周辺警察署の暑員、警察本部の主管員の非常招集など県警察の組織をあげて捜査活動に従事したところであります。 このように警察の時間外勤務は、突発的な事件・事故への対応が大部分を占めておりまして、時間外勤務の事前伺いを出す暇がなく事後決裁が実情であります。このような警察の業務の特殊性から、必ずしも予算の範囲内で時間外勤務を調整することは困難な場合が多々あることはご理解いただけるとものと思います。警察としましては、今後はさらに事務の合理化や勤務日の振り替えなど時間外勤務管理の徹底による時間外勤務の縮減と、予算の柔軟な執行に努める他、時間外勤務手当の予算確保に努め、不支給の解消に努めてまいりたいと考えております。
【坂本県議・再質問】
 サービス残業の件ですが、先ほどの知事の答弁は手当が充分に支給されていないのではないかというふうには感じられているということで、先ほど私がお聞きいたしました
サービス残業が存在するかどうかについては、明確にお答えがなかったように思います。これは県警部長につきましても警察本部長につきましても、そのようなニュアンスだろうと思うんですけれども、そこの辺ぜひ実態を明らかにしていただきたい。先ほど言いましたような方法も含めまして実態を明らかにしていただきたいと思います。
 明確にされておりませんが、先ほど警察本部長が予算の範囲内ということを言われましたが、その予算の範囲内でしか支給できないというふうに上限を定めていること自体が問題なんですよということが、厚生労働省から通知されてるわけですね。これは厚生労働省なり、あるいは各都道府県の労働基準監督署から出されているパンフレットですけれども、賃金不払い残業の解消を図るために講ずべき措置等に関する指針ということでこうやって啓発されているわけです。そういうことに対してどういうふうにお考えなのか、予算の範囲内でしかできないということで、ことたれりというふうに思われているのかにつきましては、明確にお答えをいただきたいと思います。
【黒木警察本部長・再回答】
 ただ今のご質問の主旨は、予算の範囲内でのみ超過勤務を支払わないのかというお話だと思いますが、当然のことながら先ほど申し上げました警察業務の特性から言いまして、必ずしも予算の範囲内で全てが賄えるというわけではございません。では、賄えなかったらどうするのかというお話でございますが、そのまま払わずに済むというものでもないと思います。その場合には当然のことながら公費に関することでございますので、県財政当局にお願いをいたしまして、追加的な何らかの措置ができるかできないか、そういったところをですね真剣に追求してきていた、という所でございます。
 今後とも財政当局のいろんなお知恵を借りる場が多くなると思いますけれども、いずれにしましても時間外勤務手当つきましてですね、第一線の現場で休日も取れずに頑張っている警察職員、努力すれば報われる、県民から感謝と尊敬を受け、誇りと使命感を持って仕事ができる、そのような環境づくりに全力をあげたいと思っております。以上であります。
【坂本県議・再々質問】
 残り18秒ですので、18秒以内で終わらせます。警察本部長にお願いしたいと思いますが、その残業手当に関する予算の見積書、さらにそれの査定額、こういったものについてはぜひ来週からの総務委員会の中で示していただきたいというふうに思います。

E知事の政治姿勢
最後に、知事の政治姿勢についてお尋ねします。
 まず、四期目出馬の意思表示をされたばかりで、このような質問をするのもいかがなものかとは思いますが、改めて多選批判に対する知事の認識についてお伺いさせていただきます。
 知事は6月定例会の答弁や公約的なものの中で、多選については、「何期何年務めるかといった一般論ではなく、本人のやる気や意欲、さらには改革の志や新鮮な気持ちを持ち続けていけるかどうかが最も大切なことだと思います。同時に、何期というよりも年齢と体力が問われる仕事だ」と考え方を述べられています。
 しかし、私は一般論の中に込められた問題点を知事がどれだけ認識されているかということは、大変重要だと思うわけです。知事が一般論として片づけていることにこそ、多選の弊害の本質が存在しているのだと思います。知事が長期間在任していることに伴い、強大な権力を同一人物が長期間にわたって独占することは、いくら政党の推薦を受けない無党派知事であっても変わりありません。そして、知事の個人的つながりが県庁内外に扶植され、人事が偏向し行政が側近政治化し、県政が私物化される危険を伴います。さらに、職員の士気も沈滞して清新な県政が期待し難くなり、暗黙のうちにプラス・イメージは知事に、マイナス・イメージは副知事やその他の職員にというような役割分担が決められてしまいます。知事というものは、どうすれば知事の顔が輝き、どうすれば渋い顔をするかを心得た人々に囲まれて仕事をしているのです。実際は、ただもうひたすらに知事が交代するのを待つという状態が生じるとともに、「殿、御乱心」とささやかれるようになっても、多くの場合は権力の魔力に侵されることで、多選をくり返していくということが指摘されるのです。今、そのような兆しが見え始めていると感じられる方も少なくないのではないかと思います。
 また、知事は、日常が選挙運動になっています。知事は大きな権限を持ちながら、自治体の顔としてあらゆる場面に登場します。毎月毎年、膨大に作成されるさんSUN高知や県発行のパンフレットには、ほとんど顔写真と名前が入って配られます。このことからしても、選挙の公正という観点から見るならば、現職と新人のハンディというのは、とてつもなく大きいのです。その結果、なかなか候補者が出てこない。そして、住民も選挙に関心を持たなくなって投票率はだんだんと下がってきてしまうのです。さらに進むと、無投票という事態が起こります。これも多選の弊害の一つではなかろうかと思います。
 多選を戒めてきた例として、古くは1962年に阪本元兵庫県知事が「水がよどめばボーフラがわく。首長の任期は二期八年が限度」と辞任して話題になったり、87年には恒松元島根県知事が同じ理由で四選を辞退しています。岩國元出雲市長は「権力が1カ所に長く居座るとき、必ず障害が生ずる。予算と人事権を手に入れれば、あとは時間さえかければ批判勢力は駆逐できる。権力はますます長期化し、行政の停滞、癒着、腐敗は激しさを加える。一人の首長の仕事は10年以内に限るべきだ」という発言をされて、辞されました。さらに、橋本知事が当初政策総合研究所の所長として考えられていた細川元熊本県知事は、「権不十年」と言うことで、二期で知事の職を辞しました。そして、この春には北川前三重県知事が「熟慮の上に決心した。権力の座の在り方を考えた。どんなに立派な人物でも功罪がある。民主主義は権力者を交代させるのが条件だ。」と述べ、引退されました。知事は、「多選の問題点を指摘された知事は、いずれも政党の推薦や支持を、受けてこられた方でした。」と言われてますが、長野県の田中知事は無党派でありながら、自ら多選自粛条例の提出さえなさったのではないでしょうか。それと、知事は、「僕は当初から政党の推薦や支持を受けない無党派の知事として」と言われていますが、初挑戦の際に支持した当時の社会党に対して大変失礼なことではないでしょうか。
 いずれにしましても、橋本知事におかれましても、多選を戒めてきた知事のような感性を是非お持ち頂き、四選出馬についての再考を求めるものです。
 そこで、お尋ねしますが、知事は三期12年の間、公私混同することなく、一般論として言われる多選の弊害を自らにまた自らの周辺に一切生じさせていないと、自信と確信を持って県民に明らかに出来るのかどうか、お伺いします。
 最後に知事が四期目の選挙に臨むにあたって、「今度こそ、お金がかからない、また、お金をかけない選挙を実施したい」と決意されていることについて、お伺いします。「今度こそ」と言われたのは、これまでの三期については結構のお金がかかったことの裏返しだろうと思います。選挙において、その準備や選挙期間中に一定の費用を必要とすることは理解できます。ただ、それが、適正に処理されていれば問題はないと思うのですが、昨日の依光議員の質問によって、そのことに多くの県民に疑義が生じたのではないでしょうか。しかも、県発注工事の請負業者から、資金を返済にあてたとすれば、大問題です。昨日の知事答弁は全面否定と受け止められる内容ですが、この際、是非、真偽のほどを明らかにされた上での出馬表明にしていただかないと、県民の皆さんに信を問うことは出来ないと思います。そのためには、昨日の議事運営委員会扱いとなっていることについては、自らもその場を設けるぐらいの決意を示されるべきだと思いますが。いかがでしょうか。
 今、お尋ねした質問や、昨日の依光議員の質問に関連する質問もありますが、答弁をお聞きした上で、再度質問させていただくことを申し添えまして、第一問を終わります。
【橋本知事・答弁】
 次に、多選に関してのお尋ねがありました。
 これまでも申し上げてきましたが、知事の仕事の忙しさを考えますと、在職期間の長さよりも年齢や気力の問題の方が大切だと感じていますし、多選を認めるかどうかは何よりも県民の皆さんが判断をされることだと思います。
 また、これも繰り返しになりますが、私は当初から無党派の知事として新しい形を貫いてきましたので、一般的に多選の弊害と言われます、特定の関係やしがらみは非常に少ないのではないかと自負をしています。
 また、公私混同といったことにも充分注意をしてきたつもりでございます。このことは多くの県民の皆さまにもご理解をいただいていることだと思いますが、権力がもたらす問題点につきましては、ご指摘のあった点を充分心に留めておきたいと思います。
 次に、昨日の依光議員の質問に関してお尋ねがありました。昨日、依光議員にもお答えをしましたが、ご指摘のことは私の知らないことや事実ではないことですので、それ以上の説明はできません。また、12年の歳月が経った今となりましては、証言にも様々な思いが重なりますため、事の解明を図ることは、正直難しいと思います。 このため私は12年前にまつわるお話も、また、この12年間の私の姿勢も全てあわせて、次の知事選挙を通じて県民の皆さんのご審判を仰ぎたいと思います。私からは以上です。
【坂本県議・再質問】
 最後に知事の政治姿勢の項でお尋ねいたしますが、公私混同については充分に注意をしてきたということであります。それにつきまして非常に、コウ私は首をかしげたくなるようないろんな声が届いてくることに、まあ懸念をしております。知事は99年8月8日高知新聞、3期目に臨むにあたっての際の記事の中で、「この8年間、公人としての発言でも、私人としての行動でも、後ろ指をさされたり、県民の皆さんに後ろめたさを感じることは一つもない」というふうに語っておりますけれども、もしこの公私混同の事実が生じたら、どういうふうにご判断されるのかをお聞かせいただきたいと思います。
 それとあわせまして、先ほど全てを含めて県民の皆さんに、この昨日(9月30日)の依光議員の発言の問題については、全てを含めて県民の皆さんに判断を仰ぎたいということですが、何も明らかにされないまま判断を仰ぐと言われましても、県民は困るんではないかと。一定解明されるべきものは解明されたうえで、そのうえでどう判断するのかということが求められるだろうと思うんですね。で、我々としては今朝(10月1日)の高知新聞で昨日の知事の記者会見、あるいはそのメモを出された笠さんの記者会見が報道されているわけです。これによって昨日の議論よりは、より具体的な部分が判明したわけですけれども、その中でもちょっとお伺いしておきたいのですが、この依光質問にいたる主な経緯ということで、知事が実際に笠さんとお会いしている経過が出されています。知事は8月以降、笠さんと何度お会いしてどのようなお話をしたのか、それについて明らかにしていただきたい。
 2つ目に、この大型公共工事を受注した建設業者から資金調達をしたというふうに指摘されておりまして、この笠さんの記者会見の中ではそれが坂本ダムというふうに言われておりますが、この坂本ダムの共同企業体の代表業者は確か熊谷組だったように思いますが、県内業者はどこでしたでしょうか?それとその資金調達について真偽をお伺いしたい。昨日はトータルで「知りません」という形にしてますが、その項目についてお聞きしたいということです。
 最後に、知事は選挙期間中にお住まいになっていたマンションにつきましての質問の中で、「その方方に負担してもらったと思った」というふうに昨日コメントされております。その方方というのはどういう方方で、その負担してもらった額は昨日示された300万円でよろしいのかどうか、マンションでお暮らしになっていたわけですから、当然その敷金や家賃等はご存じやったんやないかなというふうに思いますけれども、その入居期間と家賃及び敷金など要した費用についてわかっていればご報告いただきたいというふうに思います。
 いずれにしましてもその方方にということで、他人にもし負担してもらっているのであれば、これも寄付行為にあたるのではないかというふうに思ったりもします。もし、それがそうでないとしても所得税法の中でですね不当に安い家賃、例えばこの場合はタダになっているわけですから、人に負担してもらうんであればタダになるわけですから、不当に安い家賃の場合は、それは収入というふうに見なされるというふうになってると思いますが、それは収入として報告がされたのかどうか、以上についてお聞きします。
【橋本知事・再回答】
 それから私自身の政治姿勢に関してでございますけれども、まず、後ろめたいことがないというので公私混同の事実云々というご指摘がございましたが、具体的にどういう事例を指しておられるのかがわかりませんので、何ともちょっとお答えのしようがございませんが、自分自身は先ほどの1問目にお答えをいたしましたように、公私混同ということも充分配慮して、この12年間知事としての仕事をしてきたつもりでございます。 次に笠さんと何度あって、どんな話をしたのかというご質問でございました。笠さんとは8月以降3回お目にかかっています。1回目は笠さんから久しぶりに会いたいというお話を承って、8月15日の戦没者の慰霊の祈念の式典の出張の際8月14日の夜、東京羽田の笠さんのお宅に伺ってお話をいたしました。このときは笠さんから、もう3期で辞めてぜひ国政に出ないかと、今国政もこんな状況で、だいちゃんのような人間を求めていると、もう高知でやるのはもう充分だろうと、ぜひ知事の仕事は3期目で辞めて東京に来て国政に出て頑張ってほしいと、こういうお話に終始をいたしました。その後、斜向かいにございます、小料理屋に行ってアナゴの天ぷらをごちそうになり、そしていっしょに写真を撮ったというのがその8月14日でございます。
 それから2度目は9月25日で、これも東京出張の際に羽田のお宅に伺いました。奥様共々3人で話をいたしましたが、このときには私の耳にもいろいろな声が聞こえてまいりましたので、どうしてそういうことになっているのかという、笠さんの思いというか真意をお聞きをしたいと思って伺いましたけれども、まあ先ほどの3期で辞めて国政にというようなお話の繰り返しで、どういう思いで笠さんが行動されているのか、そこは充分にはわかりませんでした。およそ40分ほど家にいたと思いますが、帰り際に笠さんが、「俺ももう年だから、葬式には線香ぐらいあげに来てくれな」とこうおっしゃるので、もちろん線香をあげに行くよというお話をして別れました。
 それから3回目はつい先日でございますが、9月28日の夜でございます。このときは何人かの方々との中でございましたので、特段、笠さんと直接お話をしたということはございません。笠さんとお目にかかったことの回数と、その中での話の内容は以上のようなことでございます。
 それから2問目といたしまして、昨日の記者会見等で出ました、県の公共事業を受けた企業はどこかということでございますが、この事業を受けました企業体は、熊谷・佐藤・新進建設工事共同企業体でございます。このことに関しましても、私は昨日、依光議員のご質問に対してお答えをいたしました通り、私自身は全く知らないことでございますのでそれ以上のことをご答弁することができません。
 次にマンションのことでございますけれども、平成3年の8月に高知に来ましてから、平成4年の4月に公邸に引っ越すまでの間、高知市中宝永町にございますライオンズマンションで生活をしておりました。当初の敷金や家賃がいくらだったかということを明確に覚えておりませんけれども、平成3年11月の選挙で当選をし12月の7日に知事に就任をしまして以来、翌年の3月31日までの間は知事の公舎として県が支払いをしておりますので、その数字を見ますと敷金が20万円、仲介料が10万円、家賃が10万円でございますので、例えその8月から選挙が終わって知事就任までの12月7日まで4ヶ月といたしましても、300万円という金額はちょっと数字的に合わない金額ではないかと思います。
 私は県民の皆さんに署名活動もしていただいて、体1つでぜひ来てくれと、こう言われまして8月の半ばに高知に越してまいりました。ここがあなたの拠点だといってそのマンションをお世話をいただきましたが、もう翌日から朝は8時から夜の12時ぐらいまで、ほぼ1日も休みを取らずに動き回っておりました。つまり、もう寝るだけに使った所でございますので、あまり家のことがどうなっているかということまで頭を巡らすことはできませんでした。先ほど寄付行為というお話もございましたが、私はお世話をいただいたボランティアの草の根の皆さん方が、まあ何らかの形でご負担をいただいたのかということを、今にして思えば思いますので、寄付行為という認識は特に持っておりません。
 また、そのようなことで、寄付行為というような視点からの問題点があるとは思いませんので、今そのときにお世話になった方々の個人名をあげるということは控えさせていただきたいと思います。私からは以上でございます。
【坂本県議・再々質問】
 それと、知事に最後に申し上げます。いずれにしても今回の事案を解明しないままに昨日の、「全てを含めて県民の審判を仰ぐ」という姿勢では理解し難い部分がありますので、ぜひ前向きな姿勢を示していただきたいことを要請して終わります。