2月定例会賛成討論(08年3月19日)


 お許しをいただきましたので、ただいま議題となりました議発第16号「在沖米海兵隊員による女子中学生暴行事件に関する意見書議案」について賛成の立場から討論をさせていただきます。
 去る2月10日、沖縄県北谷町で在沖米海兵隊員による女子中学生暴行事件が発生しました。今回の事件は、1995年の「米兵による少女暴行事件」を想起させ、沖縄県民をはじめ米軍基地を抱える全国の自治体に、改めて大きな衝撃と恐怖を与えることとなりました。また、今回の事件は女性の人権を蹂躙する悪質な犯罪であり、被害を受けた少女・家族の心中を察すると激しい怒りを禁じ得ません。
 一方で、本末転倒の被害者に対する中傷キャンペーンによって告訴を取り下げざるをえない状況が作り出されたという残念な事態となっています。事件が起きた場合、まず、加害者の責任を追及し、その上で再発を防ぐ手だてを考えるのが、良識ある社会の在り方であるはずです。その意味からも、被害に遭った本人や家族の心の傷に、さらに塩をすり込むような言動とることで加害者と同列の立場になってしまうという最低限の認識が共有されなければならないことを付言しておきたいと思います。
 さて、在日米軍が起こした事件・事故は、防衛施設庁が提出した資料によるだけでも、1952年から2007年までに公務内外における事件事故件数は20万1481件にのぼり、日本人が巻き込まれて死亡した人数も1,076人になっています。ただし、沖縄返還前の情報は提供されていないため、沖縄返還前の情報を含めると件数や死者はもっと増えると考えられます。
 アメリカ本国や世界に駐留している米軍人に関係する性犯罪は2006年だけで2947件に上り、05年に比べ573件約24%も増加しています。これはアメリカ国防総省が連邦上院・下院の軍事委員会に報告した強姦罪、強姦未遂罪などの件数であり、事件が起きるたびに綱紀粛正に取り組んでいるはずなのに逆に増えているのは、この間、有効な手だてが講じられてこなかったことを浮き彫りにしています。
 これまでも、不祥事のたびに米軍は綱紀粛正、再発防止、兵員教育の徹底を口にしてきましたが、改まる気配は一向になく、過去の教訓は何ら生かせていません。米軍は2月20日から「反省の期間」として軍人、軍属、家族の外出禁止措置を実施してきましたが、その期間中も、フェンスを乗り越えた嘉手納基地所属の上等兵が建造物侵入容疑で逮捕されるなど、一向に反省の色は見られません。県民の多くの方にとっては、事件が相次いでいるので外出禁止措置がそのまま継続されるものと考えていたところ、軍人は夜間だけを外出禁止とし、軍属と家族の外出禁止措置を解除し、「『反省の日』の期間は終了した」と言ってのけるなどの米軍の姿勢は、到底理解できるものではありません。また、「反省の期間」でさえ事件を起こしながらも「綱紀粛正を図っている」という米軍の説明を鵜呑みにすることもできませんし、それを放置している日本政府に事態の改善を図ろうとする意思があるのか疑わざるをえません。
 事件の全容を解明するとともに速やかに公表し、被害者と家族に対する謝罪及び誠意ある補償を行うことは、当然のことながら、これまでの度重なる犯罪を踏まえた米軍の再発防止対策の実効性がみえない中、構造的な問題に踏み込まざるをえません。米兵の犯罪は軍隊が持つ暴力性や抑圧感などと無縁ではないでしょうし、米兵の犯罪が駐留する他国でも頻発している背景は、協定に守られているという「おごり」によるものだと言わざるをえません。
 今回の沖縄県の中学生暴行事件を受け、在日米軍基地を抱える十四都道県でつくる渉外知事会は3月11日、国に日米地位協定の抜本的見直しをあらためて要請しました。その中では、会長を務める松沢成文神奈川県知事が「米軍基地に起因する事件事故の問題の根底には地位協定がある。」として、見直しなどを訴えらています。
 日本は、米軍と軍人・軍属に有利な、つまり日本人に差別的な「日米地位協定」の運用を許し、世界全体の対米支援総額の半分を超える「対米接受国支援」または「思いやり予算」という名の巨大な防衛分担金を米国に提供しています。そして、この協定によって地域住民の平和で安全な暮らしを守ることが目的ではなく、「米軍との円滑な行動」を妨げないことを優先し続ける日本政府の姿勢は断じて許されるものではありません。
 例えば、環境問題では、基地返還に当たって米軍は原状回復義務を負わないため、汚染除去は日本側の負担であるが、独米地位協定にあたるボン補足協定では、基地返還の際の原状回復義務と環境浄化責任を米軍に義務付けています。また、イタリアでは、すべての米軍基地はイタリアの司令官の下に置かれ、米軍側は重要な行動をすべて事前に通告し、いかなる事件・事故の発生もイタリア側に通告する定めとなっており、米軍の行動が国民の生命・健康に危険が及ぶとみなせる場合は、イタリア司令官に米軍の行動を中止させる権限を与えているとのことです。さらに、見直しということについても、米韓地位協定では、1991年と2001年の2度改定が行われ、ボン補足協定も過去3度改定されています。
 これらのことからも、国内の犯罪に対しては日本の法律で対処するのが主権国家としてあるべき当たり前の姿だということを踏まえ、この機を逃さず、基地被害の撲滅につながる国民本位の協定へと改定するため強い姿勢で働きかけるべきであります。
 以上のことを踏まえるならば、在沖米軍は沖縄県民への明確な謝罪と実効性ある再発防止策を示すべきであることは当然ですが、日本政府に対しても、事件の再発防止にむけて最も望まれる抜本的な対策は、米軍基地を撤去することを前提として、当面は「米軍基地の一層の整理縮小と海兵隊を含む兵力の削減を行うこと」であり、緊急的になしうる現実的な対応は、「日米地位協定の抜本見直し」であるということを踏まえて、構造的な諸問題の解決を図るよう強く要求するものであります。
2月18日付けの沖縄県議会議長から、高知県議会議長に対する「在沖米海兵隊員による少女暴行事件に関する意見書」の決議依頼を私たちはどのように受け止めるべきなのでしょうか。この少女暴行事件を「断じて許すことができない悪質な犯罪」として、「二度と再び女性に対する暴行事件を起こさない」ため、今後粘り強く政府や米軍等に対し、県民の目に見える形での具体的な再発防止策を求めていく所存であるが、このような取り組みは沖縄県だけの取り組みだけでは十分な効果をもたらすことができるとは思われないことから、全国の議会のご支援を賜ることが必要であると考えられての決議依頼を熱い思いとして受け止めるとともに、米軍基地を抱えていると言うだけで、安心して暮らせない沖縄県民に対してせめてこのようなことでしか支援できないことを反省しながらも、高知県議会においても意見書決議という形で応えていくべきではないのかと考えます。
 議員各位の御賛同を心からお願いいたしまして、私の賛成討論といたします。