2016年02月定例会予算委員会(3月7日)

◎30番(坂本茂雄君) 
 それでは、順次、質問をさせていただきたいと思います。
 まず、南海トラフ地震対策についてお尋ねいたします。
 知事が提案説明で、「第2期南海トラフ地震対策行動計画の取り組みから見えた八つの課題の一つで、重点的に取り組むべきもの」として述べられた、高知市の長期浸水区域内における確実な避難について、危機管理部長にお尋ねします。
 ここでは、高知市と連携し、住民一人一人が避難先を決定し、確実に津波から避難することができるよう、地区ごとに避難行動を検証した上で津波避難計画の見直しを支援するとされています。
 そして、そのことを具体化するために、可能な住民は、長期浸水区域以外へと津波避難させることを想定されていますが、地域の住民からは、住民の声を聞かずして進められる津波避難シミュレーション事業が効果のあるものとなるのかとの懸念の声が上がっています。
 そこで、この事業のもととなるアンケートが高知市によって実施される予定でありますが、昨年2月定例会で危機管理部長が「高知市の長期浸水区域における救助救出を検討する長期浸水対策連絡会については、救助される住民側の視点も反映させるため、関係する地域の自主防災会の代表者の参加を高知市と協議していく」と答弁されたことを実施した上で、アンケート項目の設定などを検討すべきではないか。それを踏まえてこその津波避難シミュレーションの実効性ではないかと考えますが、お尋ねします。

◎危機管理部長(野々村毅君)
 長期浸水対策は、県市連携会議ですとか、長期浸水対策連絡会の枠組みがございまして、県市が連携して取り組んでおるところでございます。
 また、来年から、お話のありました、来年から行うシミュレーション等の取り組みにつきましては、その連絡会のもとに設けた副部長級で構成しております、救助救出担当者会というのがございまして、県市がアンケートの内容も含め、そちらで調整しながら進めることとなっております。その際には、自主防災組織の代表者の方々の参加をいただき、救出救助される側の住民の皆様の御意見もそこでお伺いし、反映していきたいというふうに考えてございます。

◎30番(坂本茂雄君)
 それでは、アンケート策定の過程でも住民の声が反映されるというふうに受けとめてよろしいでしょうか。

◎危機管理部長(野々村毅君)
 アンケートの内容につきましては、具体的に言いますと、やはり、シミュレーションを実施します学識経験者の方なんかの意見をお伺いしながら、この担当者会の中で、具体的に詰めていくことになると思うんですけれども、そこに、住民の代表の方に参加いただくということで、救助される側の意見というのも十分反映されていくものではないかというふうに考えております。

◎30番(坂本茂雄君)
 それで、もう一つ、長期浸水対策における、要配慮者の緊急避難対策の避難行動要支援者名簿作成、及び、個別避難計画作成の取り組みについて、地域福祉部長にお尋ねします。
 2013年の改正災対基本法では、地域防災計画の定めるところにより、避難支援等関係者に対する名簿情報の提供を義務づけています。2月29日付け高知新聞による避難計画などの記事によりますと、本県は79.4%が完成したとされる要支援者名簿を、災害前から提供するのは94.1%となっています。提供先はどの範囲で、どのような形で事前提供し、避難訓練などの活用を想定されているのか、お尋ねします。

◎地域福祉部長(井奥和男君)
 避難行動要支援者名簿の情報につきましては、議員、お話にありますように、改正災害対策基本法に基づき、各市町村の地域防災計画で定めるところにより、消防、警察、民生委員、自主防災組織、社会福祉協議会などの関係者に提供されることとなっております。その際、名簿情報につきましては、個人情報に該当することとなりますので、各市町村が避難行動要支援者本人からの同意を取得した範囲内で行うこととなります。
 県としましては、提供された名簿情報に基づき、地域で要支援者を支援する関係者の皆様が中心となって、個別避難計画を作成の上、避難訓練や日ごろの見守り活動に活用し、発災時の迅速な避難につなげていただきたいというふうに考えております。
 このため、県としましては、同意の取得、あるいは、個別避難計画の作成、訓練の実施に必要な経費に対しまして補助制度を創設し、市町村を支援しているところでございます。

◎30番(坂本茂雄君)
 同意の取得を前提とされているということなんですが、同意がない場合でも、それぞれの自治体が条例で定めた場合には、それを根拠とした提供というのは可能なのではないでしょうか。

◎地域福祉部長(井奥和男君)
 議員のお話のとおりだと思います。条例に基づいてやることも可能でございます。

◎30番(坂本茂雄君) そういったことも含めて、94.1%の自治体が事前提供されるということなんですけれども、その事前提供の提供先も、いわゆる、先ほどお話になった部分というのは例示でありますので、この法の中の例示でありますから、それ以外にも民間支援団体、あるいは、マンション管理組合とか、そういったところも提供も可能になってくるとは思うんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

◎地域福祉部長(井奥和男君) 昨年の4月1日付けの消防庁の調査結果に基づきますと、先ほど例示しました以外の団体のほうに予定しているところ、その他のものを予定しているのは、調査結果によりますと、24市町村、そちらのほうが例示しました団体以外にも予定しておるというふうな結果になってます。具体に、その団体名称の範囲、内容については、手元では把握できておりません。

◎30番(坂本茂雄君)
 続きまして、地区防災計画について、危機管理部長にお尋ねします。
 14年9月定例会で、私が質問して以降、県内でも、黒潮町が町独自で地区防災計画づくりに取り組んだり、高知市が下知地区を内閣府のモデル地区としての指定を受けて、地区防災計画策定への支援を行っていますが、現状はこれら以外に、地区防災計画策定の取り組みが行われている自治体や地区はないと伺っています。
 私も、下知地区の皆さんと策定に向けた検討会に参加したりする中で、まさに「自助と公助は限度があるが、共助は人と人との結びつきであり、助け合いであるので、どこまでも強くすることができる。地区防災計画は共助を強くする計画である」という内閣府アドバイザーの言葉を実感しているところであります。
 そこで、お尋ねしますが、地区防災計画策定の取り組みは、減災への備えや発災後の活動などについて、地域住民が話し合って、自発的に活動の計画を作成することで、地域の防災力やコミュニティーの再生・活性化を図ることにつながることになると思いますが、地区防災計画の策定をどのように評価し、県内の自治体における地区防災計画策定がどのように図られていくべきかとお考えか、お聞きします。

◎危機管理部長(野々村毅君)
 地区防災計画は、地区住民による自発的に行われる防災活動に関する計画でございます。地域の皆様が、活動内容や役割分担、運営ルールなどを話し合い、活動体制を作り上げ、計画として取りまとめ、さらには、計画に基づく防災活動を実践、継続していくということになります。
 こうした計画策定をきっかけとして、地域の防災をテーマに皆様が話し合い、防災活動を実践していくということは、委員のおっしゃるとおり、防災力の向上はもちろんのこと、コミュニティーの活性化にもつながるものと思っております。
 そうした意味からも、地区防災計画の取り組みは、地域で機運が醸成され、自発的に取り組むことに意義があるというふうに考えております。また、市町村は、そうした自発的な取り組みが地域で行われるようになってきた場合、積極的に関わり、支援していくべきというふうに考えております。

◎30番(坂本茂雄君) 今の答弁を聞いてますと、私、今から13年前の議会での質問を思い出すわけで。その当時、橋本、当時の知事に対して、南海地震対策のための条例を作らないかという提案をしましたところ、県民の意識がそこまで高まっているのかどうか、どちらの意識が高まるかによって、そのことについては考えていきたいというやりとりを2年間重ねました。その後、県のほうで条例づくりが進んだわけですけれども、まさに、地域住民の機運が醸成されるかどうか、そして、それを、市町村が支援するかどうか。しかし、それは一体となってやっていく必要があるんですね。それを待っていてはだめなときもあるわけで、そういう意味では、例えば、次にお尋ねしますが、地区防災計画の策定の取り組みを促進する上で、例えば、来年度、避難所運営体制整備加速化事業費補助金として、避難所運営マニュアル策定支援を行うということになっておりますけれども、そういう形で、地区防災計画策定加速化事業費補助金というような取り出しをすることによって、各市町村の策定支援による計画づくりを促進するというのも一つの方法ではないかと思いますが、そのことについてお伺いします。

◎危機管理部長(野々村毅君)
 お話にありました避難所運営体制整備加速化事業補助金につきましては、対象となる避難所が、現在、現時点で、900カ所以上と非常に多く、マニュアルの策定を加速化するために期限を設けて支援する制度ということでございます。
 一方、地区防災計画は、地域の住民の皆様や事業者など、さまざまな団体がじっくりと時間をかけて話し合いを行い、策定していくことが重要でありますので、一定の期間に多くの計画を策定を目指して加速化する事業に対する補助制度にはなじまないのではないかなというふうに考えてございます。
 なお、地区防災計画策定に当たりましては、勉強会の開催、計画策定の取りまとめ、策定に関する経費につきましては、お話にもありましたように、地域防災対策総合補助金により、市町村と連携して、補助を継続してまいります。
 なお、現在、県の地域本部や市町村が、津波避難計画の訓練や、現地点検、避難所運営マニュアルの策定など、地域に入って、地域の皆様と一緒になって取り組みを進めておるところでございます。地域防災計画の構成項目として、ガイドラインにも示されているこうした取り組みが、地域の皆様の防災意識を高め、ひいては、その防災計画の取り組みの熟度の高まりにもつながっていくのではないかというふうにも考えておるところでございます。

◎30番(坂本茂雄君) 先日、兵庫県の防災リーダー養成講座というところへお招きいただきまして、そこでお話を聞いていますと、兵庫県などでは、自主防災会の取り組みの柱の一つとして地区防災計画を位置づけて、カリキュラムの中に入れて、そういう機運を県が促そうとしてますね。そういうことからも、ぜひ、県も市町村も、そういった機運を高めていくような取り組みをしていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
 そして、実は、この地区防災計画、市町村の地域防災計画に規定されなければ、地区防災計画にはならないということが明らかになってます。それでは、正式に地域防災計画に規定されなければ、その後、地区防災計画をPDCAで回していくにも、市町村の支援が受けられないということになってしまうんではないか。
 そういった意味では、地域の地区防災計画づくりのモチベーションを高めるために、地区防災計画を市町村地域防災計画へ規定するためのハードルを下げる、そういう必要があるのではないかと考えますが、いかがでしょうか。

◎危機管理部長(野々村毅君)
 災害対策基本法では、地域の皆様が作成した素案を市町村の防災会議に諮り地域防災計画に位置づけられることで、地区防災計画になるというふうに、これは規定されてございます。市町村の地域防災計画に位置づけることによりまして、市町村の防災活動と地域コミュニティーの防災活動が連携することで、公助と共助が補完し合い、持てる力を発揮するということで、地域防災力の向上が図られることになるため、こうした地域防災計画に位置づける手続そのものは、非常に必要だというふうに認識しております。
 一方、提案された素案が、これは、住民の皆様の合意というのが前提ではございますが、市町村の地域防災計画と大きくそごがなければ、制度として創設された趣旨から言っても、市町村の防災会議は積極的に受けとめ、自発的な防災の取り組みを最大限尊重するといったことからも、地区防災計画と位置づけられるべきものというふうに考えてございます。そのためにも、先ほど申し上げましたように、計画策定に市町村が積極的に関わりを持つことが重要だというふうに考えてございます。

◎30番(坂本茂雄君)
 続きまして、事前復興のあり方についてお尋ねいたします。
 これまで、県が、南海トラフ地震発生後の速やかな復興を目指して、復興の基本的な考え方の検討など事前に準備しておくべきことの検討に着手されて、勉強会もされてます。その勉強会でも示されていましたし、本会議での答弁でも触れられていましたが、これまでの取り組みは、迅速な都市の復興のための県・市町村職員連携による復興体制の強化や復興への対応力の向上を目的とした震災復興都市計画指針づくりでありますが、その行動手順が幾ら的確かつ速やかになったとしても、住民合意が追いつかなければ、住民不在のものになってしまうことを懸念いたします。
 指針の中でも位置づけられていますが、住民がいざというとき対応できるために平時にしておかなければならない、地区まちづくり協議会の組織化や事前復興計画づくりに向けた取り組みの支援が早急に行われるべきではないかと思いますが、そのための協働のあり方や支援や手法をマニュアル化するなどの取り組みも進めるべきだと考えますが、土木部長にお尋ねします。

◎土木部長(福田敬大君) 東日本大震災では、復興計画の作成段階から住民と話し合い、合意形成に時間をかけたことにより、結果的に早期の復興につながったケースもあると伺っております。平時から行政と住民が協働のもと、復興について議論を行うことは、早期の復興につながる重要なことと認識をしております。住民の皆様方に、しっかりとした議論をしていただくためには、まずは県や市町村の復興に携わる職員が、復興計画の立案力や提案力、それから、コミュニケーション能力を一層高めていく必要があると考えております。このため、来年度から、毎年四つの市や町の地区を対象に、復興計画づくり策定までの実践的な訓練を順次行ってまいる予定でございます。この訓練の中で、まちづくり協議会等の組織化に向けて、構成員や地域のリーダー的役割を担う方の選出方法などについて、市町村と協議をし、その結果を高知県震災復興都市計画指針に反映してまいりたいと考えております。あわせて、住民向けのわかりやすい資料づくりについても検討してまいります。

◎30番(坂本茂雄君)
 よろしくお願いしておきたいと思います。
 また、1月20日に県が開催いたしました、復興に関する庁内勉強会で、『災害復興法学』、この本なんですけれども、この本の著者の岡本正弁護士をお招きしての勉強会がありました。私も、そこで聞かせていただく中で、いろんな教訓があることを学ばせていただきました。とりわけ、発災後のリーガル・ニーズ、いわゆる法的な問題点が幾つもあることを、事前にやはり知っておく、そのことは大変重要だろうというふうに思いました。
 本県においても、事前復興の面から、今から備えておくべきことの法的な問題などについて、第三期南海トラフ地震対策行動計画に、法的相談体制を組織することを位置づけておく必要があると考えますけれどもいかがか、そのことが災害復興の迅速化にもつながると考えますが、知事にお伺いします。

◎知事(尾ア正直君)
 確かに、被災後、生活再建に向けて1歩を踏み出していくためにも、さまざまな支援制度とか、情報提供や相談体制、こういうものをしっかり整備しておくということは重要だろうと思いますし。また、特に、阪神淡路大震災、東日本大震災でも、専門家の団体の皆様が生活再建のためにいろんな御相談にのられたという事例があるということを伺いましても、この相談体制を整備していくということの重要性ということを認識をいたします。
 特に、法的な知識を要する相談、例えば、相続問題、二重ローン問題、借家の問題、こういうことに関しては、正直、行政による対応には限界のあるところも出てくるだろうと、そういうふうに思われますので、専門家による相談体制を整備する必要があるかなと、そのように思います。県として、県弁護士会、県行政書士会などの専門家団体と連携した、被災後の相談体制の整備について、ちょっと検討を重ねたいと、そのように思います。

◎30番(坂本茂雄君) その場合に、ぜひ、発災後だけでなくて、事前からそういう相談体制の中で、県民が相談もできるような体制につなげていただけたらというふうに思っております。
 続きまして、災害時の共助における医療救護体制について危機管理部長にお尋ねします。
 第三期南海トラフ地震対策行動計画でも重要な取り組みとなっています、地域の総力戦による前方展開型の医療救護体制の構築のための総力戦の人材確保として、県民参加を促進する仕組みづくりとあり、応急手当や搬送の技術を身につけ、共助の力をつけようとされています。
 私は、これまで、9年前に、静岡県で取り組まれ始め、今治市の防災士会を通じて四国内にも啓発され始めている市民トリアージについて、お話を聞いたり、実際に研修を受けたりする中で、その意義と役割を学んできました。
 トリアージは医療行為であり、医師、看護師、救命救急士が行うことが原則なのは当然ですが、医師も看護師も救急隊もいない、呼んでも来る可能性がないところで、多数のけが人が出たらどうなるのか。責任が持てないから何もしないでいいのだろうか。一見元気そうなクラッシュ症候群の患者を後回しにして、騒ぐ軽傷者を病院に運んでいいのだろうか。ということを考えれば、搬送の優先順位をつける市民トリアージの導入について、研修などに取り入れてはどうかと考えますが、お尋ねします。

◎危機管理部長(野々村毅君)
 南海トラフ地震が発生いたしますと、年間の救急搬送件数にほぼ匹敵する負傷者が一度に発生するということが想定されるため、けがをしていない県民の皆様には救護活動に参加していただきたいというふうに考えておるところでございます。
 今後、県民総力戦による前方展開型の医療救護体制を確立するため、県民の皆様に応急手当や搬送の技術を身につけていただく取り組みを進めることとしております。委員からお話のあった市民トリアージ、搬送トリアージについては、それをさらに1歩進めた提案ではないかというふうに受けとめておるところでございます。医療従事者でない住民が行うこととなるため、どこまでできるのか、または、どこまでやらせてもよいものなのか、というような課題を整理し、今後、検討していきたいというふうに思っております。

◎30番(坂本茂雄君)
 ぜひ、先行事例もありますし、愛媛県のほうでは、県立病院のドクターなんかも関わって、このこと研究されておりますので、ぜひ、御検討いただきたいと思います。
 続きまして、憲法における緊急事態条項のあり方について、知事にお尋ねします。
 私も、昨年9月定例会で質問させていただきましたし、今定例会での桑名議員、あるいは、吉良議員の質問に対して知事の答弁を踏まえたときに、やはり憲法に緊急事態条項を規定しなくてもよいとの思いで、質問させていただきます。緊急事態条項を憲法に規定することの危険性などについては、既にこれまでにも指摘させていただきましたし、先日の吉良議員も指摘したところですので、その点は省きまして、お尋ねします。
 知事は、昨年9月の答弁でも、自民党憲法改正草案を念頭に置いていないとされ、吉良議員への答弁でも「災害対応上の課題として述べているのであって、災害以外の目的に使われてはならない」と述べられているのでお聞きしますが、自民党の憲法改正草案では、第98条で「内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる」とされています。このような広範多岐曖昧な事態で、宣言を発することができるという1点を捉えても、知事は、自民党憲法改正草案の98条及び99条は認めることはできないという理解でよろしいでしょうか。

◎知事(尾ア正直君)
 私が申し上げましたのは、大規模災害への対応のための緊急事態条項が災害以外の目的に使われるといった権力の乱用はあってはならないという趣旨の答弁をしたものであります。でありますので、大規模災害対応以外の緊急事態条項の必要性を否定するものではありません。
 しかしながら、緊急事態条項、こういうものが適用される事態というのは、できる限り限定した形で限定列挙的に記載をすることが望ましいと、私はそのように考えております。

◎30番(坂本茂雄君)
 続きまして、知事は、災害が広範囲に及んだ場合に、参議院の緊急集会が開催できない事態が想定されるというふうにおっしゃっておられたと思います。緊急集会がもし、これは開催可能であっても、内閣に対して権限を付与する必要があると考えているかどうか、お尋ねします。

◎知事(尾ア正直君)
 少なくとも、災害に関して言えば、参議院の緊急集会が開かれるのであれば、緊急集会で対応するということのほうがよろしいのではないかなと、そのように思っているところです。
 しかしながら、例えば、衆議院解散中、さらに参議院も半分の定員の皆さんが改選期に当たって選挙をしておるというような最中であったりした場合の、その緊急集会、いわゆる参議院が半数で行われる場合の緊急集会の定足数というのは、3分の2になります。これだけの人を本当に集めることができるのか。それができないという事態もあり得るのではないか。そういうことも十分に想定をして、あらかじめ考えておくということも必要ではなかろうかという問題提起をさせていただいているということであります。
 少なくとも災害に限って言えば、緊急集会が開かれるのであれば、その緊急集会での議論を優先するという方向での制度設計がよろしいのではないかなと、そのように考えています。

◎30番(坂本茂雄君)
 一つには、選挙を実施するかしないか、そういう災害のときにですね。その問題は、実はありますけれども、かつて昭和17年4月太平洋戦争の真っ最中に、東京、あるいは、神戸などの大都市へ空襲が開始されているさなかに衆議院の総選挙が行われて、投票率は83.1%だったというふうなことから考えても、そういう国民性ではないのかなと、日本という国はですね。選挙をやるということができる。あるいは、いずれにしても、私は、緊急集会が逆に開催できないとしたら、それは、国民を救えない事態になってしまってる。緊急集会を開催できるだけ集めていくというふうなことが、せめてできなければ、国民を救出できない事態になっているんではないかという心配も逆にしてます。
 そういう意味で、ぜひ、緊急集会での対応ということが憲法上にはありますので、そういったことでの対応をしていただきたいというふうに思いますけども、どうでしょうか。

◎知事(尾ア正直君)
 先ほど、第1項目めで、坂本議員が述べられましたように、私は、できる限り、災害発生時の状況というのをリアルに想定をするということが必要なんだろうと、そのように思います。私は、これは、あまりいい例だと思っていませんし、よくない例だともちろん思いますが、かつて、関東大震災が起こったときに、戒厳令が発令されたとき、あのときは、枢密院さえも開くことができなかった。臨時異例の形で、戒厳令が発せられたということがありました。緊急集会ということになれば、これは、全国から議員を集めてこないといけないということになる。しかも、3分の2相当集めてこないといけないということになる。しかし、南海トラフ地震ということが起こったとき、太平洋沿岸のみならず、ほとんどの都府県がですね、西日本一帯、と言いますか、関東以西のほとんどの都府県が大きな影響を受けるという中において、いろんな負傷者も出てるという中において、議員が、そもそも物理的にこの東京までやってくることができるのか。そして、また、そもそも議員の皆さん自身が被災してる可能性というのも非常に大きいのではないか。などなどという事態というのをリアルに想定をしておくということは、いざというときに、ほんとにこの国を守っていくために、国民の皆さんの命も守っていくために必要なことではないのかなと。危機管理の観点から、やはりこれは、検討するに価値ある事項ではなかろうかと、私は思っています。
 しかしながら、少なくとも災害に、事態に対応するという観点からいけば、先ほど来、お話を申し上げておりますが、緊急集会が開けるのであれば、それは緊急集会の意志というのを、まずは優先するという形に行くほうがよろしいのではないかなと、私は思っております。

◎30番(坂本茂雄君)
 続きまして、災害時に限定した場合の私権の制限ということで、現行憲法上でも財産権、あるいは、居住移転の自由は、公共の福祉による制限を認めているわけで、これ以上の改正をして、制限をする必要はないのではないかというふうに思います。現在の憲法や法律上で制限された私権や人権以外の被災者の人権は保障されるべきであって、知事は過剰でなければ、さらに私権や人権制限も行われるべきというふうに考えられているのかどうか、お尋ねします。

◎知事(尾ア正直君) 公共の福祉という文言が、確かに憲法の中にあります。この公共の福祉の文言についてです。これによって、人権を制限するということについては、できるだけ限定的にするという方向で解釈をすべきなのだろうと、そのように思っています。
 現在の、災害対策基本法などでも、人権の制限の規定がありますけれども、今、この災害対策基本法等で規定されておるものが、この公共の福祉の観点から言って、制限できる一定の限界という形になってきているのではなかろうかと。
 今回、私が申し上げておりますのは、さらに、本当の意味で命を守ったり、災害復興をというのを速やかに行っていったりするために必要な、もう一段の制限も考える必要が出てくるのではないかということを申し上げておるのであります。そうなりますと、現行憲法における公共の福祉というだけでは読めないということになってしまうのではないかということを考えております。あえて、公共の福祉という概念を広げていく。これをどんどんどんどん広げていったら、無逓減の人権制限になってしまうのであって、そういう措置をとるよりも、しっかり国民の皆様にお諮りをして、憲法の改正という形につなげていって、いざというときの人権制限についても、しっかりとたがをはめる、乱用されないようにたがをはめる、そういう緊急事態条項というのを新たに設けるという道のほうが、むしろ安全ではなかろうかと、私は思っております。

◎30番(坂本茂雄君)
 私は、今の現行の法律制度の中で、十分対応できるのではないかと。例えば、現状でも一部内閣の立法権を定めたり、権限集中も図られることになっていますし、都道府県知事や市町村長の強制権も財産権の制限や労働の義務を課すなどの形で認められたりしています。そういう意味では、災害時の緊急事態条項に相当する規定は一定法律で制定される部分が多くあるだろうというふうに思うわけで。そういった意味では、憲法にあえて規定する必要があるのかどうかということに対して、疑問を感じているところであります。
 それで、もう1点、お伺いしたいのは、いわゆるどうしても、憲法の中に緊急事態条項を入れるという場合に、立憲主義国家では、裁判所による監視と抑制の仕組みを取り入れるというふうになっていようかと思います。どうしても緊急事態条項を必要であるというのであれば、国家の存立に関わる高度に政治的な問題については、裁判所は判断を回避するという、統治行為の法理の廃棄が行われるべきではないかというふうに考えますが、知事はどのようにお考えでしょうか。

◎知事(尾ア正直君)
 いわゆる、この統治行為の法理というのは、決して制度ではなくて、裁判所において展開されてきた理論ということかと思います。ですので、統治行為の法理、これは、法令で制度化されているものでも何でもなく、緊急事態条項との関係において、それが適用があるとされているのではない。これは、当然のことかと、そのように思います。
 先ほど申し上げましたように、緊急事態条項というのは、恐らく緊急時における統治のあり方についてと、そして、あわせて人権制限のあり方について規定する条項ということになってくるだろうと思います。
 人権制限について規定する条項となる限りにおいて、これは、当然、違憲立法審査の対象とすべきであって、統治行為の法理でもって裁判所が判断を避けるということがあってはならない、そういうことではなかろうかなと、私は思います。

◎30番(坂本茂雄君)
 ちょっと時間が足らなくなってきましたんで、最後の質問は、要請にさせていただきたいと思います。
 ぜひ、知事、災害対応のための法整備を、さらに徹底研究をしていただいて、法的に事前に整備しておくことはきちんと整備しておく。そのことを、やはり、今から備えておくことがより実践的だろうというふうに思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 つづきまして、観光振興における宿泊施設のバリアフリー化について、お尋ねします。
 平成24年2月定例会の一般質問でも取り上げさせていただいた観光振興における宿泊施設のバリアフリー化について、お尋ねいたします。
 400万人観光の定着から、さらなるステップアップに向けて、五つの戦略の柱、そして、スポーツツーリズムや歴史博覧会開催と盛りだくさん観光振興策が図られようとしていますが、障害のある方も含めて、誰でもが安心して宿泊できる体制を整備してこそ、本当の意味でのおもてなしと言うべきではないかと考えています。
 そこで、4年間前にお尋ねした経過から、これまでの間に、県内の主要なホテル、旅館などのうち、障害者用トイレのある施設、車いす対応の客室がある施設、車いす対応の浴場のある施設、従業員などによる介助の対応ができる施設などについて、どのように整備されたか、観光振興部長にお聞きします。

◎観光振興部長(伊藤博明君)
 平成22年3月に県が取りまとめました、みんなのお出かけマップに掲載されたホテル、旅館、74施設のうち、現在も営業している70施設について、現時点では、障害者用トイレのある施設は33施設から45施設へ12施設増、車いす対応の客室がある施設は14施設から21施設へ7施設増、車いす対応の浴場のある施設は4施設から7施設へ3施設増となっております。また、この他にも、浴室にシャワーチェアーか、簡易なバス用のいすや手すりを設置している施設が13あり、今後整備予定がありとされていますのが、障害者トイレが1施設、車いす対応客室が3施設、車いす対応浴室が4施設となっております。
 このように、ハード面の整備は進みつつありますが、経費的な負担が大きいこともあって、まだ十分に進んでいないのが現状でございます。
 ソフト面では、従業員の方が何らかの配慮が必要なお客様への対応ができるという施設は、33施設から46施設へ13施設増と、全体の7割の施設で対応ができるようになっております。

◎30番(坂本茂雄君)
 今言われた数字をなかなか実感できていない障害のある方とか、そういう方の宿泊状況があるようです。そういった意味で、ちょっとすいません、地域福祉部長への質問飛ばしまして、すいませんが。そういう意味で、こういう体制をどうやって築いていくか、マンパワーもそうですけども、それの本気度を示すために、今後は、このバリアフリー化の指標を産業振興計画の観光分野の指標として位置づけて、具体化を図るべきだというふうに考えますけども、その点について、観光振興部長にお尋ねします。

◎観光振興部長(伊藤博明君)
 高齢者や障害者のある方のみならず、妊娠されている方や外国人など、すべての人が安心して旅行を楽しめる環境づくりを進めていくことは非常に大切なことと認識しております。このため、宿泊施設に加え、観光地についても、こうしたバリアフリー化の視点を持って整備が進められることが重要だと考えております。
 国においても、昨年3月には、ユニバーサルツーリズムの取り組み拡大に向けた取りまとめが行われ、旅行業界に示されたところであり、県では、第3次産業振興計画(案)において、障害のある方や高齢者の方のスポーツ大会の誘致にも力を入れていこうとしております。
 今後、県といたしましては、ユニバーサルツーリズムを本県で具体的にどう推進していくかという視点を持って、来年度の早い時期から、関係団体と連携し、専門家を招いて、勉強会を開催した上で、実際にモニターツアーを受け入れるなど、実践的でかつ、ビジネス拡大にもつながる形でバリアフリー化の取り組みを進めていきたいと考えております。
 数値目標につきましては、こうした取り組みを進めていく中で検討していきたいというふうに考えております。

◎30番(坂本茂雄君)
 障害者差別解消法が施行されたときに、利用者のほうから要望があって、合理的配慮しなければ、障害者差別解消法で禁じられている差別に当たるのではないか。そういうことを考えたら、この合理的配慮、民間事業者には義務ではありませんけれども、努力しなければならないこととして定められていると思いますので、そのことの徹底も含めて、今おっしゃられたこと、ぜひ、早急に実践化を図っていただきたいということを御要望しておきたいと思います。
 つづきまして、動物愛護推進員の養成と動物愛護教室の開催について、お尋ねします。
 昨今、犬猫の殺処分を減らすために行われている民間ボランティア団体の方の活動や県の雌猫の不妊手術費の助成を行う中で減少しつつありますし、さらに、来年度は譲渡先を探す橋渡し支援ボランティアの制度も始めようとされています。
 これらの努力は続けていただく中で、さらに、動物愛護推進員の活動と動物愛護教室の開催をさらに充実させることで、「動物について正しい知識を知ることで、命を大切にする気持ちや思いやりの心を育んでもらい、人と動物が共に仲よく暮らせる社会をつくる。動物による事故を防ぐ方法を普及させる」という目的を達成できたら、おのずと殺処分の対象となる犬猫の数が減るのではないかと考えているところです。
 そのために、動物愛護教室の実施など啓発活動を担われている動物愛護推進員について、健康政策部長にお尋ねします。
 2017年度に3年任期の動物愛護推進員の新たな委嘱がされますが、それまでに稼働可能な推進員の増員・確保が可能となるような講習会のあり方や新たな取り組みが考えられないか、お尋ねします。

◎健康政策部長(山本治君)
 次期委嘱の際には、少しでも多くの方に、動物愛護推進員になっていただけるよう、関係者を通じて、講演会、犬猫の飼い方講習会、動物愛護教室などに来ていただくよう呼びかけるとともに、動物愛護の集いなどのイベントや県のホームページでも募集を行っていきたいと考えております。

◎30番(坂本茂雄君)
 その場合に、私が言ったのは、稼働可能な推進員ということで、そういうふうに受講したりして、委嘱を受けたけれども、実際現場へ行ってみると、なかなかこの愛護教室の対応が大変だと、ちょっと気が引けるなというようなこともあり得るわけですね。そういった意味で、そういったお試しで、そういう現場も見た中で、本当に自分はやろうというふうな気持ちを持って委嘱を受けることができるようになるのかどうか、そういう工夫はできませんか。

◎健康政策部長(山本治君)
 今言ったように、委員も言われたように、実際やっているところをまず見ていただくということが大事だと思いますし、あとは、もう積極的にその方の気持ちの問題もありますんで。ただ、専門的な一定の知識を持っている方に一定やっていただけないかというようなお声かけもしていきたいと思っております。

◎30番(坂本茂雄君)
 ぜひ工夫していただいて、今まで以上に、そういう実際担うことができる、そういう推進員を委嘱できるようにしていっていただきたいというふうに思います。
 で、教育委員会のほうは、その動物愛護教室の開催に当たって、教育長にお尋ねしたいのは、今まで最も多かった2012年と比較して、実施校数で今年度は68%に減ってます。参加対象生徒数で62%に減少してます。こういうことをもっと増やしていく、子供たちにそういう場に参加できるような機会を作っていくというお考えは、教育委員会にございませんか。

◎教育長(田村壮児君)
 その動物愛護教室は、子供たちが命を大切にするとか、思いやりを育むとかいう、よい授業だと思います。ということで、県教育委員会としても、メールマガジンとか、そういったことでの広報をしておりますが、最終的に、こういった特別授業的なものをやるかについては、それぞれの学校の判断ということになりますので、我々としては、精一杯の広報はさせていただきたいということでございます。

◎30番(坂本茂雄君)
 ぜひ、積極的な働きかけをお願いしたいと思います。
 最後に、知事に、この動物愛護推進員、あるいは、愛護教室のやりとりを踏まえて、どういうふうに認識されたか、そして、できれば、知事も日程調整などして、授業をごらんになってみる、そういうお考えないかどうか、最後にお聞きします。

◎知事(尾ア正直君)
 これ、取り組みですね、教育委員会とも連携してしっかり進めていきたいと思います。私も、一度お伺いして見させていただきたいと、そう思います。

◎30番(坂本茂雄君)
 すいません。最後に、県施設における新電力の契約解除に伴う対応についての質問を予定しておりましたが、時間がありません。ぜひ、この4月からの新たな対応について、混乱のないように対応していただきたいということを会計管理者にお願いするとともに、このことが電力の自由化などに支障とならないように、県としても対応していただきたいというふうにお願いして、終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。